◎麻薬カルテルはハリスコ州の州都グアダラハラの低所得者が多く住む地区で21日にプレゼントを配ったとみられる。
2022年3月21日/メキシコ、首都メキシコシティ、オブラドール大統領(Marco Ugarte/AP通信)

メキシコのオブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領は27日、麻薬カルテルハリスコ新世代(Jalisco New Generation)」の戦闘員とみられる男たちが市民にプレゼントを配っている動画がSNSで拡散したことを受け、カルテルの贈り物を受け取らないよう市民に呼びかけた。

オブラドール氏は定例記者会見で、「一部のカルテルは市民の支持を得るためにプレゼントを配っている」と述べた。

またオブラドール氏は一部地域の住民がカルテルを支持し、麻薬密売と戦う州兵の基地設置に反対していると懸念を表明した。

SNSで拡散した動画によると、ハリスコ新世代はハリスコ州の州都グアダラハラの低所得者が多く住む地区で21日にプレゼントを配ったとみられる。

イルミネーションを施したトラックにはハリスコ新世代のリーダーの名前も書かれた。

ある動画にはカルテルを称賛する市民の姿が映っている。「彼らは私たちを助けてくれるが、政府は何もしてくれない」

オブラドール氏は複数のカルテルがプレゼント作戦で市民の支持を得ようとしていると認めた。地元メディアによると、この慣習は2010年代から本格化したという。

またオブラドール氏は、「カルテルは支配エリアの守りを固める取り組みの一環として市民の支持を集め、人間の盾として利用している」と非難した。

地元メディアによると、少なくとも3州の一部地域で27日に州兵の兵舎建設に反対するデモが行われたという。

オブラドール氏はこれらの反対デモをカルテルの影響によるものと指摘した。

メキシコシティ郊外で行われたデモの参加者は、「兵舎ができることで軍とカルテルの戦争が激化するのではないか」と懸念していた。

一部の過激な住民は国営企業の石油パイプラインや施設から燃料を盗んでいる。

オブラドール氏は「窃盗犯の登場で反対デモに参加した人々の結束は弱まった」と指摘した。「デモ参加者の大半は純粋に基地設置に反対していましたが、その中から犯罪者が出たことにがっかりし、抵抗をやめています」

またオブラドール氏はカルテルを「テロリスト」と糾弾し、「市民の大多数は犯罪者に加担してはいけないことを完全に理解している」と述べた。

2006年頃から本格化した麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人と推定されている。

メキシコ陸軍の兵士(Getty Images)
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