◎ハイチの治安は2021年7月のモイーズ大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
2021年7月21日/ハイチ、首都ポルトープランス、暗殺されたモイーズ大統領の国葬(Joseph Odelyn/AP通信)

犯罪結社を創設した罪で起訴された中米ハイチの故モイーズ(Jovenel Moise)大統領の妻の弁護士が21日、当局による一連の捜査を政治的動機によるものと非難した。

モイーズ氏は2021年7月に暗殺され、当局による捜査が続いている。

当局は19日、この暗殺事件に関連して、モイーズ(Martine Moïse)夫人を含む50人近くが起訴されたという報告書を公表。世界を驚かせた。

モイーズ夫人の弁護士はAP通信の取材に対し、「元首相を含む数十人が起訴されたという捜査当局の報告に驚いている」と語った。

また弁護士は起訴に踏み切った証拠などが開示されていないことに疑問を呈し、「当局はアンリ政権に懐疑的な見方を示している政治家や個人を恣意的に逮捕した可能性がある」と主張した。

さらに、「モイーズ夫人とは電話等でやり取りしており、場合によっては米当局に公正な捜査を要求するかもしれない」と述べた。

弁護士はモイーズ氏暗殺に関与した者が全員逮捕されたとは考えておらず、「その攻撃で重傷を負ったモイーズ夫人と子供たちは今も命の危険を感じている」と強調した。

捜査当局は米州機構のハイチ代表を務めるシャルル(Léon Charles)氏とジョゼフ(Claude Joseph)元首相も起訴したとしている。

シャルル氏は殺人、殺人未遂、武器の不法所持、国家反逆罪などに問われている。

モイーズ夫人とジョゼフ氏は犯罪結社を創設した罪などに問われているが、これが暗殺を実行した傭兵かどうかは不明である。

弁護士はAPに、「夫人はいかなる関与もきっぱりと否定している」と述べた。

また弁護士は「ギャング紛争で危機的状況にあるアンリ政権が反体制派の逮捕を命じた」と主張した。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ氏暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

首都ポルトープランスでは1年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げており、混乱が収束する目途は全く立っていない。

モイーズ夫人らの起訴はアンリ(Ariel Henry)首相の辞任を求めるデモが暴動に発展し、混迷を極めるハイチをさらに不安定化させる恐れがある。

アンリ政権は総選挙を何度も延期している。大統領は今も空席のままだ。

弁護士によると、モイーズ夫人はこの事件に関連する米国の裁判で今後証言する予定であると明らかにした。

捜査当局は2年半の捜査で50人近くを起訴し、うち11人を米国に送還。モイーズ氏暗殺に関与したとして起訴され、うち3人の刑が確定している。

ハイチで逮捕された警察幹部とコロンビアの傭兵を含む40人以上が刑務所で裁判を待っている。

米国の裁判は非公開で進められており、モイーズ氏の暗殺に関する情報はほとんど公表されていない。

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