◎ハイチの治安は昨年7月のモイーズ大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。
2021年10月22日/ハイチ、首都ポルトープランス、武装ギャング「G9&Family」の戦闘員(Matias Delacroix/AP通信)

国連のグテレス事務総長は17日、ハイチに平和維持軍を派遣し、危機的状況に置かれているハイチ人を悪夢のような状況から救い出すよう国際社会にした。

グテレス氏は首都ポルトープランスの燃料ターミナルがギャングの支配下に置かれていることに言及し、「危機を回避するためには武力行使が必要だ」と訴えた。

ハイチの治安は昨年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3カ月ほど前から「G9&Family」と「G-Pep」と呼ばれる2つのギャングが地域の支配権をめぐって戦闘を繰り広げているとみられ、国連によると、7月中旬以降の死者、負傷者、行方不明者は確認できているだけで500人を超え、数万人が国内避難民となった。

ポルトープランスではアンリ(Ariel Henry)首相に辞任を要求する抗議デモも続いている。デモ隊は燃料補助金の廃止を決めたアンリ氏の辞任と暴力の終結を求めている。

ポルトープランスの主要燃料ターミナルはギャングの支配下に置かれ、市内のガソリンスタンドは空になり、医療機関は閉鎖を余儀なくされ、一部地域ではコレラが蔓延し始めている。

グテレス氏はハイチの状況「悪夢」と呼び、「特にポルトープランスの状況は悲惨極まりない」と嘆いた。「私はハイチ警察に訓練や装備を提供するだけでなく、港を解放し、人道回廊を設置するために武力行使が必要だと考えています」

アンリ氏は今月、国際社会に支援を要請し、ギャングに対抗できる「特殊部隊」の創設に協力するよう呼びかけた。

しかし、デモ参加者や市民グループのリーダーは「国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)」の失敗が繰り返されると不満を表明している。

MINUSTAHは2004年に発足し、2017年まで活動したが、この間、ハイチではコレラの大流行で約1万人が死亡し、民主制度および法執行機関の能力を強化する取り組みもうまくいかなかった。

米国とカナダは15日、ハイチ政府との契約に基づき、装甲車と装備を納品すると発表した。

カナダ政府は声明で、「この装備は暴力を煽り、人道支援の流れを妨げ、コレラの蔓延を阻止する努力を妨げている犯罪組織との戦いを支援するものである」と述べている。

アンリ氏は米加両政府に謝意を示し、「引き続き頼りにしている」と声明を発表した。

グテレス氏は先週、アンリ氏が求めている特殊部隊の創設を速やかに検討するよう国際社会に要請していた。バイデン(Joe Biden)米大統領もこの要請を検討しているを明らかにしている。

ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は12日、ハイチの人口の半数が深刻な食料不足に直面しているという国連の警告を受け、人道支援を加速させると表明した。

またブリンケン氏はギャングやその他の犯罪組織に関与している者に制裁を科すとしたが、詳細は明らかにしていない。

米連邦議会の超党派グループもハイチのギャングや犯罪組織に制裁を科す法案を提出すると発表した。

一方、米国のトーマスグリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)国連大使は17日、ハイチに関する安保理の緊急会合で、メキシコ大使と協力してこの危機に対処する2つの決議案の起草を進めていると明らかにした。

ひとつ目の決議案は、G9&Familyのリーダーである通称「バーベキュー(Jimmy "Barbecue" Cherizier)」に金融制裁を科し、その資産を凍結し、武器購入を防ぐとしている。

トーマスグリーンフィールド氏は「この男がハイチをマヒさせ、壊滅的な燃料危機を引き起こしている」と指摘した。

もうひとつは「ハイチの治安を改善し、人道回廊を設置するため、国連以外の治安支援ミッションを許可する」としている。

トーマスグリーンフィールド氏は「この決議案は同盟国が主導する限定的かつ慎重に計画された非国連ミッションを提案する」と説明した。またこのミッションは国連加盟国の支援に依存し、人員、機材、その他の資源の提供を求めることができるとした。

決議案の提出日は明らかにされていない。

ハイチ、首都ポルトープランスで行われた抗議デモ(Getty Images/AFP通信)
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