▽ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
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中米ハイチ最大の水力発電所が反政府デモの影響で閉鎖されて以来、首都ポルトープランスと同国中部の広い範囲で停電が続いている。
国営ハイチ電力は16日の声明で、「13日の抗議デモとその後の破壊行為により、ペリグレ水力発電所が機能不全に陥り、復旧の見通しは立っていない」と述べた。
同発電所の多くの職員が反政府デモに参加し、暫定大統領評議会の委員とフィゼメ(Alix Didier Fils-Aimé)首相に辞任を要求している。
政府はこの停電を非難し、電力会社に復旧を急ぐよう求めている。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。
一連の暴力とギャング間抗争により100万人以上が住居を失い、その多くが避難所に身を寄せている。
ペリグレ水力発電所を停止させた市民団体の代表はAFP通信のインタビューで、「この停電は中部ミバレを含む複数の地域がギャング暴力に直面しているにもかかわらず、役立たずの政府が何の対応も取らないことを受けてのものだ」と語った。
また代表は「政府がギャングの暴力を容認し続ける限り、水力発電所は復旧しないし、警察官や軍人を含む多くの公務員が同じように行動することになるだろう」と述べた。
米国務省は今月初め、ヴィヴ・アンサムとグラン・グリフを「外国テロ組織」および「国際テロリスト」に指定した。