◎ハイチは7月に発生したジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件にアリエル・アンリ首相が関与した可能性があるという告発の影響で動揺し、崩壊の危機に瀕している。
2021年7月20日/ハイチ、首都ポルトープランス、アリエル・アンリ首相(中央)と政府関係者(Joseph Odelyn/AP通信)

9月15日、ハイチは7月に発生したジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件にアリエル・アンリ首相が関与した可能性があるという告発の影響で動揺し、崩壊の危機に瀕している。

モイーズ大統領は7月7日未明に首都ポルトープランスの自宅で暗殺された。妻のマルティーヌ夫人も重症を負い米フロリダ州の病院に入院したが、7月中旬に退院し、ハイチに戻っている。

モイーズ大統領は暗殺される数日前に、アンリ氏を新首相に任命していた。

ベッドフォード・クロード検察官は14日、モイーズ大統領の暗殺に関与したとされるジョセフ・バディオ容疑者とアンリ首相が7月7日に2度電話で話していたという証拠を確認したと明らかにした。その後、ロックフェラー・ヴィンセント法務大臣はクロード検察官に対する脅迫を確認したとして、国家警察にクロード検察官の警備体制を強化するよう命じた。

しかし、アンリ首相は15日、ヴィンセント法務大臣と閣僚評議会のレナルド・ルベリス事務局長を突然解任した。

ルベリス事務局長はAP通信の取材に対し、「疑わしい人物の指揮下にとどまることはできない」と述べ、モイーズ大統領の暗殺にアンリ首相が関与したという証拠が見つかったことに懸念を表明した。「ハイチの運命を分ける歴史的な瞬間の中にあっても、各大臣は国民のために使命を全うしてくれると信じています...」

現地メディアによると、アンリ首相の報道官は法務大臣と事務局長の解任理由を明らかにしなかったという。

一方、ヴィンエント法務大臣はツイッターに、「政府には暗殺事件に関与した者を裁判にかける義務がある」と投稿した。「ハイチは国家の尊厳をかけて事件を調査し、容疑者を独立した裁判にかけ、罰しなければなりません...」

アンリ首相はリスト・キテル氏を法務大臣、ホスエ・ピエール・ルイ氏を評議会の事務局長に任命した。キテル氏は現政権の内務大臣も兼任することになる。

クロード検察官はアンリ首相がバディオ容疑者と暗殺事件直後に電話で話していたという証拠を示したうえで、裁判官にアンリ首相を起訴するよう求めていた。

クロード検察官によると、バディオ容疑者とアンリ首相は7月7日の午前4時3分と午前4時20分に電話で話し、その時パディオ容疑者はモイーズ大統領の自宅近くにいたことが通話記録で判明したという。

米バージニア大学でハイチの政治を研究しているバート・ファットン氏は進行中の混乱について、「故モイーズ大統領のテットケール党が崩壊寸前であることを示している」と述べた。

ハイチは8月14日に発生した地震の混乱から抜け出せておらず、アンリ首相の暗殺関与疑惑は混乱をさらに深める可能性がある。

ファットン氏はAP通信に、「権力闘争は国民を疲弊させ、復興に向けた努力を妨げる」と指摘した。

アンリ首相は今週、「ハイチの安定に焦点を合わせており、召喚状、脅迫、その他のいかなる攻撃も、私の使命を邪魔することはできない」と述べたが、法務大臣と閣僚評議会議長の解任を含む一連の混乱については、まだ公の場で説明していない。

一方、アメリカ、ドイツ、ブラジル、カナダ、スペイン、フランス、EUの大使、国連および米州機構の代表者で構成されるグループは15日、ハイチ当局に暗殺の調査に全力を注ぐよう要請した。

ハイチの警察はこれまでに元コロンビア兵18人を含む40人以上を逮捕し、暗殺に関与したとされるバディオ容疑者や元ハイチ上院議員などの行方を追っている。

2021年7月21日/ハイチ、首都ポルトープランス、暗殺されたジョブネル・モイーズ大統領の国葬、マルティーヌ・モイーズ夫人(Joseph Odelyn/AP通信)
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