◎ハイチの主要な燃料供給ターミナルは地元のギャングに占領されており、政府と警察は対応に苦慮している。
2021年11月4日/ハイチ、首都ポルトープランスのガソリンスタンド、抗議者と治安当局(Odelyn Joseph/AP通信)

11月11日、米国政府はハイチで進行中の燃料不足が暴動を引き起こし、病院や銀行の運営に深刻な影響を与えているとして、米国民にハイチを離れるよう促した。

ハイチの主要な燃料供給ターミナルは地元のギャングに占領されており、政府と警察は対応に苦慮している。

米国務省は10日の声明で、「進行中の広範囲にわたる燃料不足は、銀行へのアクセス、送金、緊急医療、インターネットと電気通信、公共交通機関など、生活に不可欠なサービスを制限する可能性がある」と警告し、ハイチで生活する米国民の帰国もしくは移動を支援すると述べた。

ハイチは7月のジョブネル・モイーズ大統領暗殺事件と8月に発生したM7.2の大地震の影響で混乱状態に陥っており、先月中頃に発生した米国とカナダ人17人の誘拐事件は解決しておらず、ギャングの台頭と燃料危機は混乱に拍車をかけた。

ハイチ政府は9日の記者会見で国内の燃料が不足していることを認め、問題の解決に向け取り組んでいると述べた。

またエノルド・ジョセフ国防相によると、南部にガソリンを届ける予定だったタンクローリー30台が行方不明になり、調査を進めているという。地元メディアによると、ギャングは支配下の地域を通過するタンクローリーを奪い、運転手を拘束しているという。

燃料不足は発電機に依存している国民の生活を脅かし、水の供給や病院の運営にも影響を与えている。

首都ポルトープランスにあるセントルーク病院のマーク・エドソン・オーガスティン院長はAP通信に、「医療用酸素を供給する会社が燃料不足の影響で閉鎖されてしまい、コロナ患者の治療に影響が出ている」と窮状を訴えた。

国際NGO国境なき医師団は10日、燃料不足の影響で医療活動を制限されており、現在は重症患者の治療のみ行ていると警告した。医師団によると、燃料が届かない場合、国内の病院と救急センターは3週間以内に備蓄している燃料を使い果たすという。

燃料不足は公共交通機関の運行を妨げ、地方都市のバスの運行本数は激減したと伝えられている。主要メディアによると、首都ポルトープランスのガソリン価格は5ドル(約550円)を超えたという。ただし、主要地域以外のガソリンスタンドはほとんど営業していない。

燃料不足による物価の高騰は貧困層の家計を直撃した。ハイチの人口の60%以上は1日2ドル以下で生活する貧困層で、その多くが国際機関や人道団体の食糧支援に依存している。

ハンガーを作る工場で働く男性は地元メディアの取材に対し、「全てがひっくり返り、めちゃくちゃになった」と語った。「電気とインターネット通信は途絶え、通勤に必要なガソリンはギャングの闇市場で購入しています。世界にハイチの窮状を伝えてください...」

2021年10月23日/ハイチ、首都ポルトープランスのガソリンスタンド(Getty Images/AFP通信/EPA通信)
スポンサーリンク