エルサルバドルの人権団体「クリストサル」が弾圧に直面

クリストサルの弁護団はブケレ政権のギャング掃討作戦で逮捕された数百人の一般市民を支援してきた。
2022年3月29日/エルサルバドルの刑務所に移送されるギャング(Fred Ramos/The Washington Post)

中米エルサルバドルの著名な人権団体クリストサルは17日、ブケレ(Nayib Bukele)大統領による嫌がらせと脅迫を理由に、同国を離れると発表した。

クリストサルはブケレ政権によるギャング掃討作戦の人権侵害や、トランプ米政権との合意に基づくベネズエラ移民の強制送還などの実態を明らかにし、ブケレ政権を厳しく非難してきた。

クリストサルのブロック(Noah Bullock)事務局長は記者会見で、ブケレ氏がトランプ(Donald Trump)米大統領との提携によって権力を強化したことから、ここ数カ月で事態が急激に悪化し、国を離れることを決めたと語った。

クリストサルの弁護団はブケレ政権のギャング掃討作戦で逮捕された数百人の一般市民を支援してきた。

当局は複数の人権派弁護士を逮捕・起訴している。

クリストサルは人権と民主主義の問題に取り組むため、福音派の司教たちによって 2000年に設立され、以来、首都サンサルバドルに拠点を置き、全国で活動してきた。

ブケレ氏は2022年3月、ギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言。刑法を改正するなどしてギャング掃討作戦を本格化させた。

それ以降に逮捕されたギャングまたはギャングと疑われる市民は8万5000人を超え、うち約1万人が証拠不十分で釈放されている。

非常事態令により、警察の権限は大幅に強化され、結社の自由や弁護人を選任する権利なども制限。警察は令状なしで家宅捜索を行ったり被疑者を拘束できるようになった。

また刑法改正により、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。

ブケレ政権の掃討作戦により、国内のギャングはほぼ壊滅し、エルサルバドルは世界で最も危険な国から、中米で最も安全な国に豹変。23年の殺人事件は214件で、2015年に記録した6600件の30分の1に激減した。

ブケレ氏の支持率は80~90%で推移している。

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