◎政府は先月末頃からギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言し、刑法を改正した。
2022年4月7日/エルサルバドル、首都サンサルバドルの市街地(Jose Cabezas/ロイター通信)

エルサルバドルのブケレ大統領は12日、先月末の非常事態宣言発令以降のギャング一斉取り締まりによる逮捕者が1万人を超えたと発表した。

政府は先月末頃からギャング関連の殺人事件が多発したことを受け、非常事態を宣言し、刑法を改正した。これにより、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。

さらに政府は先週、ギャングのメッセージを共有したメディア(ジャーナリスト)に10年以上15年以下の禁固刑を科す刑法を施行した。

それ以来、全国に配備された軍と警察はギャングの構成員やギャングとつながりのある個人を手当たり次第に逮捕している。非常事態宣言により、結社の自由や弁護人を選任する権利などは制限されている。

ブケレ大統領はツイッターに、「この17日間で10,094人のテロリストを逮捕した」と投稿し、政府はギャングとの戦争を続けていると強調した。

国連人権高等弁務官事務所や人権団体は市民権の制限に懸念を表明し、政府に対し、ギャング根絶の努力においても国際法を尊重するよう促している。

中米最大のギャングであるマラ・サルバトルチャ(通称MS-13)やバリオ18などの構成員は7万人以上と伝えられており、今回の一斉逮捕で数千人が拘束されたと報告されている。

国連高等弁務官事務所の報道官は先週、「我々はエルサルバドルのギャングがもたらす暴力、治安と正義を確保する国の義務を認識しているが、取り締まりは国際人権法を遵守しなければならない」と述べ、政府に対応を改めるよう呼びかけていた。

しかし、与党とブケレ大統領の支持者は取り締まりの強化を擁護している。

米国務省も厳しい取り締まりと刑法改正に懸念を表明しており、ギャング関連の報道の制限は検閲につながる可能性があると指摘した。

ブリンケン国務長官は10日の声明で、「メディアを取り締まる法律は汚職やその他の問題に関する報道を妨げ、エルサルバドル政府に対する批判者を黙らせようとするものである」と述べた。

またブリンケン国務長官は、「米国はエルサルバドルのギャングとの戦いを支援する一方、政府に対し、報道の自由、適正手続き、言論の自由を含む重要な権利を守りつつギャングの脅威に立ち向かうよう求める」と述べている。

これに対しブケレ大統領は、「私たちはトランプ政権からは支援を受けていたが、バイデン政権からは何の支援も受けていない」とツイートし、ブリンケン国務長官を批判した。「あなたはギャングの自由を支持しています...」

ブケレ大統領の支持率は90%近くを維持しており、多くの市民が取り締まりの強化を歓迎しているように見える。

首都サンサルバドルの住民はAP通信の取材に対し、「ギャングに関与する者が悪い」と述べた。「ギャングは好きな時に盗み、好きな時に殺します。ギャングに関与しなければ逮捕も取り締まりも受けません。簡単でしょう?」

スポンサーリンク