◎タリバンは国土のおよそ3分の2を支配し、首都カブールに近づいている。
2021年8月14日/アフガニスタン、首都カブールの国内避難民キャンプ(Getty Images/AFP通信)

アフガニスタンの現地メディアによると、タリバンは政府の管理下に置かれていた北部最後の主要都市バルフ州の州都マザーリシャリーフを占領したという。

アシュラフ・ガニー大統領はほんの数日前に国軍の士気を高めるためにこの都市を訪れていたが、兵士たちはタリバンの攻勢に屈した。

タリバンは国土のおよそ3分の2を支配し、首都カブールに近づいている。

現地メディアによると、これまでに少なくとも25万人以上が国内避難民になり、その多くが首都カブールの難民キャンプに逃げ込んだという。国連は先日、過去1カ月だけで民間人1,000人以上が犠牲になったと報告した。

タリバンに占領された地域の女性はブルカ(目の部分だけを開けるイスラム教のヴェール)の着用を強制され、社会規則を破った市民は殴打されたと伝えられている。

西側諸国は大使館スタッフやその他の要員の避難に全力をあげており、アメリカのジョー・バイデン大統領は米兵1,000人の追加配備を承認した。AP通信によると、この追加でアフガン撤退作戦の要員は約5,000人まで増員されたという。

一方、北部最後の主要都市マザーリシャリーフの地元当局者はAP通信の取材に対し、「都市はほとんど争うことなくタリバンに屈した」と述べた。当局者によると、国軍の兵士はほぼ戦うことなく降伏したという。

マザーリシャリーフは隣国ウズベキスタンとタジキスタンにつながる主要交易地である。タリバンは1990年代後半にこの都市を一度占領した。

ロイター通信などによると、マザーリシャリーフの地域軍に協力していたウズベキスタン軍のアブドゥル・ラシッド・ドスタム氏とタジキスタン軍のアッタ・モハマド・ヌール氏は安全な地域に撤退したという。

ドスタム氏は今週初めにガニー大統領と会談した際、「タリバンは北部の都市に何度か現れたが、私たちは常に敵を上回った」と述べていた。

タジキスタン軍のヌール氏は14日、フェイスブックの投稿で、「兵士たちは装備と武器をタリバンに提供した」と述べ、国軍を非難した。

南東部パクティカ州の州都シャラナと東部クナル州の州都アサダーバードも14日に陥落したと伝えられている。ソーシャルメディアにはアサダーバードの通りでタリバンの旗を振る戦闘員の写真や動画が複数共有された。

タリバンはこれで国の州都の半分以上を支配下に置き、政府の管理下にある主要都市は首都カブールと東部ナンガルハール州の州都ジャララバードだけになった。

AFP通信によると、一部地域のタリバン戦闘員は未婚の女性に結婚を強制しているという。

東部パルヴァーン州から首都カブールに避難した女性はAFP通信に、「タリバンは結婚を強制し、断れば殺すと脅した」と語った

首都カブールの一部の銀行では取り付け騒ぎが発生し、いくつかの支店は現金を使い果たしたと伝えられている。

ガニー大統領は14日に放送されたテレビ演説の中で、国軍の再動員と国民の避難が最優先事項と語った。ソーシャルメディアでは、「ガニー大統領は辞意を表明する」という憶測が流れた。

国連は14日の声明で近隣諸国に対し、アフガンの避難民のために国境を必要に応じて開くよう訴えた。アントニオ・グテーレス国連事務総長は13日、「状況は制御不能」と懸念を表明していた。

2021年8月14日/アフガニスタン、首都カブールの西に位置するヘラート州の州都ヘラート市、タリバンの戦闘員(モハメッド・サルファラジ/AFP通信)

アフガニスタン戦争の基本情報

・アメリカ主導の連合軍は2001年10月にアルカイダやタリバンを含むジハード組織を追放した。その中には9.11同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

・タリバンやイスラム国(ISIS)を含むジハード組織は連合軍への攻撃を再開し、戦争は20年たった今も続いている。

・アフガニスタン軍は連合軍の支援を受けて兵力を増強したが、タリバンの攻撃を抑えることはできなかった。

・アメリカは2020年2月にタリバンと取引した。

・タリバンはアメリカとの取引の中でアフガニスタン政府と和平に向けた協議を推進すると約束したが、交渉は破綻した。

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