東部地域では先週の大雨で大規模な洪水と土砂災害が発生し、各地で甚大な被害が報告されている。
2022年4月22日/南アフリカ、東部ダーバン近郊の村、破損した水道管の水を集める男性(Getty Images/AFP通信)

南アフリカの東部ダーバンで発生した洪水は市全域に大きな傷跡を残し、これまでに435人の死亡が確認され、4万人以上が自宅を失った。

政府は今週、現地に兵士1万人を追加配備すると発表した。兵士、警察、地方自治体の職員は行方不明者の捜索、主要インフラの再建、被災者の支援にあたっている。

東部クワズール・ナタール州とその周辺地域では先週の大雨で地盤が緩み、山間部以外でも土砂崩れや地盤の崩落が報告されている。アフリカ最大の港のひとつであるダーバン港も深刻な被害を受けたが、何とか操業を再開している。

地元メディアによると、郊外の村や小さな集落には政府の支援が届いておらず、住民たちは自力で行方不明者を捜索し、遺体の処理にあたっている。

郊外のイナンダ村の住民ンコシ氏はAP通信の取材に対し、「濁流にのみ込まれた娘の遺体を探している」と語った。「娘は12日に行方不明になりました。私は娘の死を受け入れています。1日でも早く娘の遺体を見つけ、供養してあげたいです」

またンコシ氏は隣の家族10人の死も受け入れると説明した。父親と母親、その子供、そして孫、10人全員が死亡した。

ンコシ氏によると、10人のうち5人の遺体は収容されたが、5人は行方不明だという。

最も大きな被害を受けた地域は、ダーバンの市中心部ではなく郊外の低地、主に貧しい人々が生活する地域だった。

これらの地域で生活する人々は安全とは言えない場所に家を建てていた。ただし、中産階級や裕福な人々が生活する地域でも、山間部に造られた住宅地は土砂災害に巻き込まれている。

被災した地域の学校、教会、公民館は避難所として利用されているが、政府の支援が届いていない場所では水、食料、電気、医薬品、あらゆる物資が不足している。

政府関係者によると、被害額は道路や橋などの主要インフラが3億7000万ドル(約470億円)、学校が2600万ドル(約33億円)、保健所は1200万ドル(約15億円)と推定されている。

政府は先週、国庫から約6700万ドル(約86億円)を拠出し、追加予算を速やかに確保すると発表した。

国境なき医師団のダーバン医療チームを率いるタンドレーン氏はAP通信の取材に対し、「洪水から10日ほど経った今も、ダーバンは危機に瀕しており、病院、診療所、コミュニティへの水や食料の供給が喫緊の課題となっています」と語った。

国境なき医師団は市内の4つの避難所に食料、水、調理器具、毛布、マットレス、その他の日用品を提供している。

一方、軍の報道官は23日、全壊を免れた住宅も崩壊する可能性があるとして、住民に避難の継続を求めた。

クワズール・ナタール大学 水資源研究センターのスミザーズ所長はソーシャルメディアに、「今回の大雨でダーバンの排水システムが脆弱であることが証明された」と投稿している。

スミザーズ所長はAP通信のインタビューの中で、「大雨に対応できる最低限の排水システムと住民に避難を呼びかけるシステムを確立する必要がある」と訴えた。「市中心部の排水システムは明らかにメンテナンス不足です。排水管と集水桝はプラスチックゴミで詰まり、ほとんど機能していません...」

ダーバン郊外の丘の上で生活していたセレ氏は、自宅が土砂に流されるところを見届けた。セレ氏と家族は雨が強くなった時点で避難したため、難を逃れたという。

セレ氏はAP通信に、「私は自宅に流れ込んできた水を掃き出すつもりでしたが、母に嫌な予感がすると言われ、大急ぎで友人の家に逃げ込みました」と語った。「数時間後、家のすぐ近くで土砂崩れが起きました...」

今回の洪水被害は南アフリカ史上最悪と考えられている。報道によると、同国の南東部地域は何度か大規模な洪水を経験しているが、これほど深刻な被害を受けたのは初めてだという。

南アフリカの北東に位置するモザンピーク、マダガスカル、マラウィなどは今年に入って数回サイクロンと洪水災害に見舞われ、数百人が死亡している。

2022年4月22日/南アフリカ、東部ダーバン近郊の村、政府の支援物資を受け取る市民(AP通信)
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