◎世界の避難民数はウクライナ侵攻後に1000万人以上急増し、今年初めて1億人を超えた。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は15日、アフリカで進行中の複数の問題に対処しなければ、欧州に逃れる亡命希望者の急増につながると警告した。
グランディ(Filippo Grandi)高等弁務官は15日に公表した報告書の中で、「サヘル地域の暴力、干ばつや洪水による気候危機、ロシアのウクライナ侵攻がもたらした食料危機に対処しなければ欧州に逃れる亡命希望者が増加すると、欧州諸国はもっと心配しなければならない」と指摘した。
この報告書「グローバル・トレンド(Global Trends)」によると、2021年末の時点で紛争、気候変動、暴力、人権侵害により8900万人以上が自宅を追われ避難民になった。
世界の避難民数はウクライナ侵攻後に1000万人以上急増し、今年初めて1億人を超えた。
世界は深刻な食料難にも対処しなければならない。
ウクライナは世界を代表する穀物生産国のひとつであり、南部の港に滞留している2000万トン以上の穀物と、今年収穫できる数千万トンをタンカーで輸出できなければ、世界の食料安全保障、特にアフリカ諸国は危機的状況に陥る可能性がある。
ウクライナの小麦に大きく依存しているアフリカ連合(AU)は、南部の港の封鎖を解除するよう国際社会に訴えている。
UNHCRによると、2021年末時点の国内避難民数は15年連続で増加し、5300万人以上となった。避難民が急増した主な要因はミャンマーの暴力激化、エチオピア北部のティグライ紛争、サヘル紛争(マリ北部紛争)。
グランディ氏は報告書の中で、「サヘルは数年にわたる干ばつや洪水、不平等、暴力、そして貧弱な統治に直面している」と警告した。
またグランディ氏は、「進行中の食料不安が危機に拍車をかけている」とした。「この地域の住民は苦しんでいます。食べ物も、水も、避難所もなく、逃げなければ生きていけません。この地域は欧州に非常に近い。欧州の指導者はもっと心配するべきだと思います」
グランディ氏は、「世界はウクライナ戦争が始まる以前から深刻な難民危機に直面していた」と強調した。「世界はウクライナに注目していますが、ウクライナ以外の国も緊急事態に陥っているのです」