◎フランス主導のアフリカ連合軍は2012年からサヘル地域で活動するアルカイダやイスラム国(ISIS)関連のジハード組織と戦っている。
2013年1月15日/マリ、首都バマコの幹線道路、フランス軍の装甲車(Getty Images/AFP通信)

2月18日、マリの軍事政権は国内に駐留しているフランス軍の撤退を歓迎し、計画に基づき遅滞なく撤退任務を終えるよう求めた。

軍事政権の報道官は18日に放送されたテレビ演説の中で、「我々はフランスに遅滞なく撤退を終えるよう求める」と述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は16日と17日に行われたサヘル紛争(マリ北部紛争)に関する会議で仏軍をマリから撤退させると発表した。撤退任務の期間は長くとも半年の予定。

マクロン大統領は18日、ブリュッセルのEU本部で記者会見し、「仏軍の撤退任務はマリに駐留する国連平和維持軍の安全と仏兵の安全を確保するため、秩序ある方法で実施される」と述べた。

フランス主導のアフリカ連合軍は2012年からサヘル地域で活動するアルカイダやイスラム国(ISIS)関連のジハード組織と戦っている。犠牲者は民間人込みで数千人、約150万人が避難民になったと推定されている。

フランスが西アフリカに派遣している兵士は約4,300人、マリには約2,400人が駐留している。

フランスはマリから部隊を撤退させるが、その他の西アフリカ諸国での対テロ作戦は維持する予定である。

マクロン大統領は記者団に、「マリ政府はイスラム過激派組織との戦いを軽視している」と述べ、軍事政権を非難した。

またマクロン大統領は地域の主要なテロリストとの戦いに勝利するためには、国家単位で任務にあたる必要があると強調した。

EUとマリを含む西アフリカ諸国の関係は、一部の国の暫定政府がロシアの傭兵集団「ワグナー・グループ」を領土保全のために雇って以来、緊張している。EUは昨年末、ワグナー・グループの関係者8人と石油会社3社に制裁を科した。

サヘル地域のイスラム過激派組織を取り締まる対テロ作戦、通称バルカン作戦は、チャド、ニジェール、ブルキナファソ、モーリタニアでも展開されている。フランス政府によると、軍は最終的にサヘル地域の兵力を2,500〜3,000人程度に削減することを目指しているという。

2013年にマリに派遣された仏軍は、北部に拠点を置くジハード組織の追放に成功した。しかし、組織は広大な砂漠地帯で活動を維持し、近隣諸国への攻撃を繰り返している。

マリ政府を率いるアシミ・ゴイタ大佐は2020年8月の軍事クーデターで権力を掌握したが、国際社会の非難を受け、民間の指導者に権力を移譲した。しかし、文民政府の発足から1年も経たぬうちに新たな軍事クーデターを主導し、指導者を追放した。それ以来、多くのマリ人が旧宗主国であるフランスの軍隊の駐留に反対し、各地で大規模なデモを展開している。

一部の専門家や元政治家は仏軍の撤退でマリの治安はさらに悪化すると懸念を表明し、マリ軍だけでジハード組織に立ち向かうことは不可能と指摘している。

アフリカ連合の議長国であるセネガルのマッキー・サル大統領は18日の記者会見で、仏軍の撤退と国連平和維持軍の将来に疑問を呈した。「マリ北部の治安と平和維持活動を維持することが何より重要です。しかし、マリ軍だけで領土を防衛できる可能性は極めて低いでしょう...」

仏軍の撤退はサヘル地域の治安が悪化した状態で行われるため、攻撃の標的になる可能性がある。

仏軍の報道官はAP通信の取材に対し、「撤退任務は複雑な状況下で行われることになる」と述べた。「恐らく、ジハード組織は我々に攻撃を仕掛けてくるでしょう。仏軍はマリから撤退した後も地域にとどまり戦い続けます...」

一方、マリ軍の報道官はテレビ放送の中で、「マリの治安は仏軍と国連軍が駐留しているにもかかわらず、悪化の一途をたどっている」と述べた。「彼らは我々に何を与えてくれましたか?マリは孤立しておらず、周りに仲間がいます。フランスや欧州諸国は去るべきです。私たちは国の治安を回復できると確信しています...」

2022年1月14日/マリ、首都バマコ、フランスの制裁に抗議するデモ(Getty Images/AFP通信)
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