◎ゼレンスキー氏は2カ月ほど前からアフリカ諸国向けの演説を行いたいと要請していた。
アフリカの小麦畑(FelixMittermeier/Pixabay)

ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は20日、アフリカ連合(AU)サミットに宛てた演説の中で、「ロシアはアフリカを人質に取っている」と警告した。

ロシアによるウクライナ侵攻は穀物と肥料輸出に壊滅的な影響を与え、アフリカ大陸を含む発展途上国の市民数千万人が飢餓に直面している。

AUの議長であるセネガルのマッキー・サル(Macky Sall)大統領は、「世界の安定を取り戻すためには対話が必要である」と国際社会に訴えた。

国連と西側諸国はロシアに対し、ウクライナ南部に滞留している穀物を解放するよう求めている。ロシアは西側が制裁を解除すれば要求に応じるとしている。

ゼレンスキー氏は演説の中で、「アフリカは私たちに戦争を仕掛けたロシアの人質になっている」と述べた。

またゼレンスキー氏は、ウクライナ政府は黒海の港に閉じ込められた数千万トンの穀物を解放するための「複雑な交渉」に従事していると説明した。「あなた方は遠く離れた異国で戦争が行われていると思うかもしれません。しかし、侵略がもたらした破滅的な食料価格の高騰はアフリカの数百万世帯に影響を与え、この戦争は他人事ではないという考えを呼び起こしました...」

ゼレンスキー氏は2カ月ほど前からアフリカ諸国向けの演説を行いたいと要請していた。

AP通信などによると、50カ国以上の国家元首がオンラインセッションに招待されたが、国家元首の参加は4人にとどまり、その他の国々は代表が参加した。

アフリカ諸国はロシアへの対応で意見が分かれている。17カ国が3月の国連非難決議案採決を棄権した。

サル大統領はゼレンスキー氏に謝意を示し、「アフリカは国際法、紛争の平和的解決、貿易の自由を引き続き尊重する」と述べた。

AUはロシア軍を追い払うまで戦い続けるというゼレンスキー氏の考えに賛成しておらず、対話で危機を解決するよう促している。

サル氏は今月、ロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領と会談した際、「アフリカ諸国はウクライナ戦争の犠牲者であり、ロシアはその苦しみを和らげる手助けをすべき」と述べていた。

EUのボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表は20日、ロシアの黒海封鎖について、「正真正銘の戦争犯罪であり、長く続くとは思っていない」と述べた。

ボレル氏はルクセンブルグで開催されたEU外相会議でこの問題について協議した。

ボレル氏はロシアの封鎖を「世界の飢餓を煽る試み」と評し、非難した。また同氏は、対ロシア制裁が穀物輸出の停止を招いたというロシア政府の主張を否定し、「食料は制裁の対象外である」と強調した。

ウクライナと国境を接するポーランドは、穀物の陸上輸送を加速させる取り組みを進めている。

ポーランド首相府によると、両国の閣僚はウクライナ貨物の国境通過手続きを簡素化し、穀物の輸出を促進する取り組みについて協議したという。

2022年6月3日/ロシア、ソチの政府施設、プーチン大統領とアフリカ連合議長のマッキー・サル大統領(Mikhail Klimentyev/AP通信)
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