◎チュニジアのメディアが昨年行った世論調査によると、回答者の8割が「同国には人種差別がある」と回答したという。
チュニジア、首都チュニス郊外、西欧への亡命を希望する親子(Getty Images)

西アフリカのコートジボワール政府とギニア軍政は1日、チュニジアサイード(Kais Saied)大統領のヘイトスピーチを受け、チュニジアから自国民を帰国させると発表した。

サイード氏は先週、不法入国した移民がチュニジアの安全保障と治安を脅かしているとし、犯罪増加の背景に「不法な群れ」が関与していると非難した。

地元メディアによると、サイード氏の発言後、首都チュニスなどの都市部でサハラ以南の移民数十人が拘束されたという。

コートジボワールとギニアは自国民を保護するためにチャーター機を送ると発表した。

AFP通信はコートジボワール政府報道官の声明を引用し、「大切なことは市民の命を守ることだ」と報じている。

チュニジア政府の統計によると、同国の2021年の移民数は推定2万1000人。その数は増加傾向にあるものの、チュニジアにとどまる移民は少ないようだ。

地元の人権団体はサイード氏が移民に対する「憎しみ」を扇動し、アフリカ移民に対する人種差別を助長していると非難している。

サイード氏は人種差別主義者であることを否定し、人権団体を非難した。

活動家たちは多くの移民が一夜にして職と住居を失ったり、暴行を受けたと報告している。

サイード氏の発言後、多くのコートジボワールとギニア人が本国への帰還を求めて大使館に殺到した。

サイード氏は先週の閣議で、「チュニジアは他のアフリカや湾岸諸国とは無関係な純粋なアフリカ国家であり、不法移民の群れに対処できる」と述べた。

アフリカ連合(AU)はこの発言を「衝撃的」と非難し、人種差別を助長するヘイトスピーチに警鐘を鳴らした。

チュニジアのメディアが昨年行った世論調査によると、回答者の8割が「同国には人種差別がある」と回答したという。

アフリカ北部のチュニジアとリビアにはサハラ砂漠以南の紛争や混乱に巻き込まれた多くの亡命希望者が押し寄せている。

人々は西欧への亡命を夢見て、頼りないゴムボートやボロボロの木造船に乗り、イタリアのシチリア島などを目指す。

サイード氏の発言はSNSで嵐を巻き起こしたものの、一部の支持者はこの発言を称賛している。

チュニジアは深刻な政治・経済危機に直面している。国連の推計によると、人口約1200万人のうち400万人が貧困層であり、同国の沿岸警備隊と警察は予算不足の影響で移民の捜索・救助に苦慮しているという。

2021年12月15日/チュニジア、首都チュニス、サイード大統領(Getty Images/AFP通信)
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