◎エチオピアのアビィ・アハメド首相は10日、北部ティグライ地域で進行中の紛争に勝利するためには国民の力が必要不可欠と訴え、国軍に加わるよう呼びかけた。
2021年8月8日/エチオピア、イル写真では、首都アジス・アベバ、ティグライ奪還作戦への参加を希望する市民(Getty Images/AFP通信)

エチオピアのアビィ・アハメド首相は10日、北部ティグライ地域で進行中の紛争に勝利するためには国民の力が必要不可欠と訴え、国軍に加わるよう呼びかけた。

現地メディアによると、政府当局は「全ての有能な市民を戦争に召喚し、国軍を強化し、危機に直面するティグライを反政府勢力から奪取するよう促し、6月に発効した一方的な停戦協定を一方的に破棄した」という。

ティグライ地域を支配していたティグレ人民解放戦線(TPLF)は昨年11月に勃発した国軍との戦闘に一度敗れたが、その後、他の反政府勢力とティグライ国防軍(TDF)を結成し、6月に地域の支配権を取り戻した。

2019年に隣国エリトリアとの歴史的な和平を達成したことでノーベル平和賞を受賞したアビィ首相は、「TPLFを打倒するためには国全体で戦いに挑まなければならない」と述べた。「すべてのエチオピア人はテロリストのスパイやエージェントを追跡し打倒するために、治安部隊と緊密に協力しなければなりません」

TPLFはティグライ議会の与党だったが、政府にテロ組織に指定されたため、政治活動への参加を禁じられている。しかし、TPLFは政府の命令を却下し、地域の合法的な政党として活動すると誓った。

ティグライ紛争は地域に致命的な暴力をもたらし、少なくとも数千人が死亡し、推定200万人が国内避難民になり、数万人が隣国スーダンの難民キャンプに逃亡した。国連は先月、ティグライの住民推定180万人が深刻な食糧不足に直面し、40万人以上が餓死しかけていると報告した。

一方、TPLFはアビィ首相と政府が倒れるまで戦うと誓っており、紛争の激化は避けられない情勢になっている。

TDFのスポークスマン、ゲダチュー・レダ氏は先週、AP通信のインタビューの中で、「鍛え上げた民兵を戦線に送りたい」と語った。「訓練不足の民兵や市民が戦闘に巻き込まれていることを残念に思っています。私たちは鍛え上げた民兵を戦線に送り、政府を打倒したいのです...」

TPLFの指導者たちは30年近くにわたって政府と激しく対立し、民族間の緊張につながる「民族連邦主義システム」を導入することで多くのティグリニャ人(ティグライ人)を苦しめてきた。アビィ首相はかつての敵国であるエリトリア政府との和平を達成したが、ティグリニャ人とエリトリア人は民族問題で対立しており、今回の紛争中にも激しく衝突した。西側諸国は全ての当事者(国軍、TPLF、エリトリア軍)を非難している。

TPLFはティグライ地域だけでなく隣のアムハラ州やアファール州でも影響力を強めており、先日アムハラ州にあるユネスコ世界遺産の町ラリベラを占領した。

TDFは先週、近隣地域への侵攻はティグライ地域への支援物資の搬入を妨げている国軍を排除する作戦の一環と主張した。しかし、アビィ首相は10日の声明の中でTDFの主張を却下し、「テロリストは農民の仕事を妨害している」と非難した。「ティグライの住民を助けるためにはテロリストを打倒しなければなりません。テロリストがいる限り、ティグライの農民は安全に農作業を行うことができません...」

またアビィ首相は国連を含む人道団体の支援物資がテロリストの手に渡り、国軍に悪い影響を与えていると非難した。

アムハラ州で生まれ育ち、現在はアメリカで活動しているデミッシー・アレマエフ教授はアビィ首相の声明発表後、AP通信の取材に対し、「TPLF(TDF)は武装しており、多くのアムハラ人が戦争に巻き込まれるだろう」と語った。「エチオピアの民族対立を解決するためには憲法を大きく見直す必要があり、話し合いで解決することは困難です...」

2021年5月8日/エチオピア、北部ティグライ地域の州都メケレ近く、国軍の兵士(Ben Curtis/AP通信)

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