◎エチオピアの飢餓危機は過去10年で最悪と考えられており、国連は先月公表したレポートの中で40万人以上が年内に餓死する可能性があると警告した。
2021年6月13日/エチオピア、首都アディスアベバ、アビィ・アハメド首相(Getty Images/AFP通信/EPA通信)

エチオピア北部ティグライ地域を支配するティグライ国防軍(TDF)の指導者は26日、数千人を殺し、数百万人を国内避難民にし、致命的な飢餓を加速させた昨年の紛争を交渉で解決するコミットメントを発表した。

TDFのデブレツィオン・ゲブレミチャエル将軍は国連安全保障理事会の危機会議に先立ち、アントニオ・グテーレス事務総長に宛てた書簡の中で、「ティグライ軍には公平な調停者が必要」と述べた。

しかし、アフリカ連合(AU)が紛争の初期段階で承認した「解決策」を認めることはできないと警告した。AUの本部はエチオピアにあり、エリオピア政府はAUを通して反乱軍に停戦を求めた。

アフガニスタンで発生した自爆テロの影響でティグライ危機の注目度は一気に低下したが、進行中の問題はほとんど解決しておらず、ティグライ地域の住民600万人の食糧は尽きた。

エチオピア政府とティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は昨年10月末頃に本格化し、紛争に発展した。政府軍は11月にティグライ地域を占領し勝利を宣言したが、TPLFは他の反政府勢力とタッグを組み、TDFを結成した。政府軍の勝利宣言後も戦闘は続き、6月、TDFはティグライ地域を奪取した。

国連、人権NGOアムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの監視グループ、そしてアメリカの高官は、紛争に関与した政府、TPLF、エリトリア政府を残虐行為で非難した。

世界で最も閉鎖的な国のひとつであるエリトリアとTPLFは犬猿の仲であり、1998年の国境紛争や1991年のエリトリア独立戦争などで殺し合った。

エチオピアのアビィ・アハメド首相とティグライ地域を27年にわたって支配してきたTPLFの協議はほとんど行き詰まっており、和平の見通しは全く立っていない。アビィ首相は今年初めにTPLFをテロ組織にした。

一方、アメリカの国連代表は26日の安保理危機会議の中で、「エチオピア政府は協議の呼びかけに応じていない」と非難した。

進行中の紛争は悪化しており、TDFはティグライに隣接するアムハラ州とアファール州に侵攻し、数十万人が避難を余儀なくされた。これに対し、アビィ首相は今月10日の声明で、全ての優秀な市民にティグライ紛争に参加するよう呼びかけ、TDFを止めるよう促した。

双方の爆発的な動きは国際社会の懸念を深め、国連は即時停戦を強く求めた。

双方の危険な動きはアフリカで2番目に人口の多いエチオピアの脆弱な経済を麻痺させ、混乱をさらに加速させる可能性がある。さらに、危険な隣国エリトリアの武装兵はティグライ地域に自由に出入りし、今も民間人を虐殺していると信じられている。

エチオピアの飢餓危機は過去10年で最悪と考えられており、国連は先月公表したレポートの中で40万人以上が年内に餓死する可能性があると警告した。

グテーレス事務総長は26日の安保理危機会議で、ティグライ地域の「事実上の封鎖」を非難し、住民600万人のための食糧倉庫は空になったと述べた。エチオピア政府はティグライ地域に続く道路や橋を破壊もしくは封鎖し、人道機関の食糧配給を阻止していると非難されているが、アビィ首相はこの主張を却下している。

TDFのゲブレミチャエル将軍はグテーレス事務総長に宛てた書簡の中で、「政府は食料供給を断ち、ティグリニャ人600万人を餓死させるつもりです」と述べた。

安全保障理事会はエチオピアに厳しい対応で臨むと主張しているが、常任理事国のロシアと中国が内政干渉に反対を表明したため、強制力のある決議が可決される可能性はほぼゼロと信じられている。

アメリカは今週、エリトリア軍の高官に制裁を科したが、ロシアと中国は「制裁は紛争を悪化させるだけ」だと警告した。

2021年5月9日/エチオピア、北部ティグライ地域の食糧配給所(ベン・カーティス/AP通信)
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