◎スエズ運河庁(SCA)のオサマ・ラベイ長官は4月12日に国営メディアが放送した声明の中で、「エバーギブン号の所有者である正栄汽船が補償金を支払わない限り、エジプト政府は船を解放しない」と述べた。
2021年3月30日/エジプト、スエズ運河の南、グレートビター湖に停泊したエバーギブン号(AP通信/MohamedElshahed)

地元メディアによると、エジプト政府は3月23日にスエズ運河のど真ん中でスタックし、世界の海運を混乱させたエバーギブン号を押収したという。

スエズ運河庁(SCA)のオサマ・ラベイ長官は4月12日に国営メディアが放送した声明の中で、「エバーギブン号の所有者である正栄汽船が補償金を支払わない限り、エジプト政府は船を解放しない」と述べた。

エバーギブン号の所有者は愛媛県今治市に本拠を置く船舶リース会社の正栄汽船、運航者は台湾を拠点とする大手海運会社のエバーグリーンマリン社。運航管理会社はバーンハード・シャルト・シップマネジメント。建造は2018年、全長400m、幅59m、総重量約20万トン。中国からオランダのロッテルダムに貨物を輸送する途中で座礁したため、35億ドル相当(3,800億円)のコンテナは積まれたままである。

海運の専門、ロイズリストのデータによると、スエズ運河西ルートを通過する商品の価値は1日あたり約5,600億円、東ルートは約5,000億円にのぼり、エジプト政府は1日あたり最大15億円の通行料収入を失ったという。

ラベイ長官によると、正栄汽船は補償金の支払いを拒否したという。「エジプト政府は船を正式に没収しました。所有者は何も支払いたくないそうです」

一方、正栄汽船は産経新聞の取材に対し、「補償金の交渉は続いており、まだ支払える段階ではない」と述べた。「速やかに交渉を終えエバーギブン号の貨物を輸送したいと考えていますが、詳細についてはコメントできません」

ラベイ長官は補償金の額は明らかにしなかったが、州の新聞Ahramなどの地元メディアによると、エジプト政府は少なくとも9億ドル(約1,000億円)の支払いを要求したという。

補償金にはエバーギブン号の救助活動費用、運河の停滞による様々な損失、座礁の影響でエジプト政府が失ったスエズ運河の通行料などが含まれている。

AP通信によると、エバーギブン号の没収命令は4月12日にエジプトの都市イスマイリアの裁判所が発効し、船の乗組員はその事実を4月13日に知ったという。

匿名を条件にAP通信の取材に応じた当局者は、「イスマイリア検察庁は事故原因の解明に向けた調査の開始も合わせて指示しました」と述べた。

ラベイ長官は補償金の支払いに関する交渉は続いていると示唆したが、事故調査の進捗や補償の詳細については明らかにしなかった。ラベイ長官は先週、「補償問題を法廷に持ち込めば、所有者は私たちが要求している補償金以上の金額を支払うことになる」と述べていた。

エバーギブン号の所有者は正栄汽船だが、運航者は台湾、船をスタックさせたのはドイツの企業であり、訴訟は複雑になる可能性が高いと伝えられている。

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