◎マリ政府は昨年8月の軍事クーデターで一掃され、バ・ヌダウ氏が暫定大統領、モクタール・ウアン氏が暫定首相に就任したばかりだったが、5月24日に発生した新たな軍事クーデターで暫定政府は崩壊した。
2021年5月30日/マリ共和国、首都バマコ、記者会見するアシミ・ゴイタ暫定大統領(ゲッティイメージズ/AFP通信)

5月30日、西アフリカの指導者たちはマリ共和国で発生した軍事クーデターに懸念を示したうえで、マリを西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)から除外すると発表した。

ECOWASは関税の撤廃、貿易振興、経済協力、独立の保障などを通じて、加盟国の経済、生活水準、政治的安定を図ることを目的としている。

ガーナのシャーリー・アヨルコール・ボッチウェイ外相はサミット後の声明で、「ECOWASはマリ共和国で発生した政治的混乱は、西アフリカの安全保障に影響を与える可能性があると懸念しています」と述べた。

サミット終了後、記者団の取材に応じた加盟国の首脳たちはマリ当局に対し、自宅軟禁下に置かれているバ・ヌダウ前暫定大統領とモクタール・ウアン前暫定首相の即時釈放を求めた。

首脳たちは共同声明の中でマリ軍のクーデターを非難し、昨年9月に締結された調停に違反していると述べたうえで、文民政府の首相を直ちに指名し、2022年2月の議会選挙に向けた準備を進めるよう求めた。

マリ政府は昨年8月の軍事クーデターで一掃され、バ・ヌダウ氏が暫定大統領、モクタール・ウアン氏が暫定首相に就任したばかりだったが、5月24日に発生した新たな軍事クーデターで暫定政府は崩壊した。国連はマリの平和維持ミッションに年間約12億ドル(約1,300億円)を費やしており、来年2月までに民主的な選挙で新議会を組織するよう求めていた。

軍事クーデターを主導したアシミ・ゴイタ大佐は近日中に首相を指名し、来年2月までに民主的な選挙を行うと約束したと伝えられている。

2021年5月30日/マリ共和国、首都バマコ、暫定大統領に就任したアシミ・ゴイタ大佐(ゲッティイメージズ/AFP通信)

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の首脳たちは、アフリカ連合(AU)、国連、EUを含む全ての国際パートナーに、マリの文民政府への移行を支援し続けるよう呼びかけた。「アフリカの関係国は、絶え間ないテロ攻撃とコロナウイルスに関連する安全保障上の課題に直面しています。マリ共和国で先日発生した危機もそのひとつであり、私たちは問題の速やかな解決と文民政府の樹立に向けたマリの努力を支援し続けます」

ECOWASの議長を務めるガーナのナナ・アクフォ=アド大統領はサミットの冒頭の挨拶で、「ECOWASはマリの民主主義と安定を回復するために、マリ国民を支援し続けなければならない」と述べた。

マリの憲法裁判所は28日、ゴイタ大佐を暫定大統領に指名すると発表したが、一部の専門家は、司法は軍に脅されていた可能性があると主張した。判事は声明の中で、「ゴイタ暫定大統領は文民政府への移行プロセスを成功に導く」と述べた。

ゴイタ大佐は、バ・ヌダウ暫定大統領とモクタール・ウアン暫定首相は職務を怠り不正を働いたと主張し、軍事クーデターを正当化した。「暫定政府は新内閣を発足する際、私に一言も相談しませんでした。私は副大統領に就任する予定でした」

今回の軍事クーデターは、新内閣の発表から約1時間後に発生したと伝えられている。

AUを含む国際社会は軍事クーデターを非難している。国連安全保障理事会は、前大統領と首相は辞任を強制されたと主張した。EUやフランスを含む他の機関は新たな制裁を科すと警告している。

ゴイタ暫定大統領はサミット後の記者会見で、「マリはECOWASの決定を尊重する」と述べた。「私はマリに戻り、全ての利害関係者を巻き込んで文民政府の樹立に向けた取り組みを加速させると約束します」

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