タイ憲法裁がペートンタン首相の職務停止、軍批判で窮地に
ペートンタン氏は隣国カンボジアとの対立と電話会談の内容がリークされて以来、圧力に直面している。
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タイの憲法裁判所は1日、ペートンタン(Paetongtarn Shinawatra)首相に対する失職請求を受理した。
憲法裁は判決までの間、ペートンタン氏に職務停止を命じた。
それまでの間、副首相が首相職を代行する。
ペートンタン氏は隣国カンボジアとの対立と電話会談の内容がリークされて以来、圧力に直面している。
カンボジアの影の支配者であるフン・セン(Hun Sen)上院議員は先月末、3時間を超えるテレビ演説でタイ国境の係争地をめぐる問題に言及。ペートンタン氏とその父親であるタクシン(Thaksin Shinawatra)元首相を罵倒した。
ペートンタン氏は38歳。軍事クーデターで失脚したタクシン氏の娘であり、同国初の女性首相であるインラック・シナワット(Yingluck Shinawatra)元首相は同氏の叔母にあたる。
タクシン氏は2006年の軍事クーデターで追放。インラック氏は2014年の憲法裁の判決で失脚した。
野党はペートンタン氏がフン・セン氏に国内情勢について相談し、軍幹部を軽視したことを非難している。
カンボジア政府もペートンタン氏がフン・マネット(Hun Manet)首相ではなく、父親のフン・セン氏とこの問題について協議したことを非難し、ペートンタン氏を「無能」と呼んだ。
両国は緊張を緩和することで合意したものの、国境に増援部隊を展開したり、交易を制限するなどの措置を講じている。
カンボジア軍は5月28日にタイ国境沿いでパトロールを実施していたところ、タイ側が銃撃したと主張。タイ軍はカンボジア兵が国境沿いの係争地に侵入したため、威嚇射撃を行い、カンボジア兵が反撃したため応戦したと説明している。
この衝突は約10分間続き、カンボジア兵1人が死亡。現地の指揮官が互いに連絡を取り合い攻撃をやめるよう部隊に命じた。
ペートンタン氏は先月、地元メディアがリークした電話会談で、フン・セン氏に対し、「国内で圧力に直面している」と述べ、カンボジアとの国境地帯でタイ軍を監督する将校を含めた「反対派」の意見に耳を傾けないよう求めた。
野党と反対派はペートンタン氏が軍幹部を「敵」と呼び、フン・セン氏に屈服したと非難。同氏を「売国奴」と呼び、辞任を要求している。
専門家もペートンタン連立政権の政策が機能していないと指摘。最低賃金の引き上げ、現金給付プログラムの変更、カジノの合法化に関する議会での論争などを挙げている。
トランプ米政権との関税交渉が遅々として進まないことも支持率低下につながった。トランプ政権による90日間の一時停止措置が7月9日に切れると、36%の相互関税が課されることになる。
アナリストたちはカンボジアとの国境紛争とその後のリークが最悪の結果につながったと指摘している。
王室とつながりの深い軍はクーデターを起こしながらも、タイの経済成長を支えてきた。
今回のリークでペートンタン氏が軍を軽視していることが明らかになり、野党だけでなく、連立政権からも辞任を求める声が高まっている。
連立政権の第2党であった「タイの誇り党」はリークを受け、政権から離脱。これにより、ペートンタン氏は69議席を失い、内閣改造を余儀なくされた。
タイとカンボジアは1907年にカンボジアがフランスの植民地だった時代に策定された国境をめぐり、1世紀以上にわたって争ってきた。