◎巨額の債務を抱えるスリランカの外貨準備は確実に減少しており、政府は輸入品の支払いにひどく苦労している。
2022年4月1日/スリランカ、首都コロンボの大統領邸近く(Eranga Jayawardena/AP通信)

スリランカの大統領は1日、首都コロンボの自宅近くで前日に暴力的な抗議デモが発生し、1日にも全国規模の抗議デモが計画されていることを受け、非常事態を宣言した。

地元メディアによると、非常事態が宣言されたことにより、ラージャパクサ大統領は治安部隊に個人の拘留、財産の占有、家宅捜索を命じることができるようになった。また、必要に応じて議会の承認を得ることなく法律を変更できる。

治安部隊は公共の安全を確保するために、反乱、暴動、内乱を鎮圧する権限を付与された。

31日のデモに参加した数百人は、燃料価格の高騰、停電、生活必需品の不足に抗議し、大統領邸近くで警察と衝突した。地元メディアによると、少なくとも54人が暴動に関与した疑いで逮捕され、数十人が負傷したという。

警察はデモ隊に放水砲と催涙ガス弾を撃ち込み、何とか鎮圧した。ラージャパクサ大統領の報道官は1日の声明で、「数千人の組織化された過激派が暴動を起こした」と非難した。

逮捕された1人の弁護士を務めるボパゲ氏はAP通信の取材に対し、「デモ隊の一部は病院で治療を受け、1日に出廷する予定」と明らかにした。

首都コロンボ近郊に出されていた夜間外出禁止令は1日朝に解除された。

巨額の債務を抱えるスリランカの外貨準備は確実に減少しており、政府は輸入品の支払いにひどく苦労している。

市民はランプ用の灯油やガソリンを購入するために毎日長い列を作っている。電力会社は火力発電の運用に必要な燃料を確保できず、頼みの水力発電も雨不足の影響でまともに機能せず、停電が常態化している。

スリランカ政府は外貨を獲得できないプロジェクトに数十億ドルを投資し、巨額の債務に苦しむことになった。同国は今年、対外債務を70億ドル近く処理する予定だが、外貨準備は3月中頃時点で4億ドルを下回った。

コロンボ郊外の大統領邸近くに集まった群衆は、警察が用意したバス2台を石打ちの刑に処し、1台に火を放ち、駆けつけた消防車を追い払った。

コロンボ警察の報道官は1日、この騒動で警察官24人と民間人数人が負傷し、警察と軍の車両数台が放火されたと記者団に語った。

また報道官は、抗議デモを取材していたジャーナリストが警察官から暴力を受け、少なくとも1人が逮捕された件について、「警察は暴動を取り締まる規則に基づき行動しただけ」と説明した。

スリランカの経済危機は歴代政権が輸出を多様化せず、紅茶、衣料、観光といった伝統的な収入源に頼ってきたことが主な原因と考えられている。

またコロナウイルスの感染拡大も同国の経済に大きな打撃を与え、政府はこの2年間の経済損失を140億ドル(1.7兆円)と見積もっている。

中央銀行によると、2月のインフレ率は17.5%で、1月から0.7%上昇したという。政府は自国通貨のスリランカ・ルピーを為替相場ではなく政府の判断で変動させることを認めているため、スリランカ・ルピーは今後数カ月でさらに急落し、物価や人件費を押し上げると予想されている。

2022年3月31日/スリランカ、首都コロンボの大統領邸近く、政府に抗議する市民と警察(Eranga Jayawardena/AP通信)
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