スリランカは国債の利払いに苦労している。
2022年3月4日/スリランカ、首都コロンボの民家、灯油のランプの明かりで勉強する女児(Eranga Jayawardena/AP通信)

スリランカ警察は31日、大統領官邸近くの抗議デモに参加した数百人を解散させるために放水砲と催涙ガス弾を使用した。

デモ隊は首都コロンボの郊外にあるラージャパクサ大統領の私邸近くで長時間の停電と生活必需品不足に抗議し、スローガンを叫びながら行進した。

スリランカ政府は国債の利払いに苦労しており、今年は70億ドル近くの対外債務を処理しなければならないが、専門家によると、使用可能な外貨準備は3月中頃時点で4億ドルを下回ったという。

外貨準備が不足した結果、燃料や調理用ガスなどの輸入品が不足し、停電は1日最大13時間に及ぶこともあると伝えられている。

地元メディアによると、医薬品、燃料、粉ミルク、調理用ガスの不足は特に深刻で、市内のガソリンスタンドには灯油を求める市民が毎日長い列を作っている。

電力会社も発電所の稼働に必要な燃料を確保できず、頼みの水力発電も雨不足の影響でまともに機能せず、停電が常態化している。

スリランカの経済危機は歴代政権が輸出を多様化せず、紅茶、衣料、観光といった伝統的な収入源に頼ってきたことが主な原因と考えられている。

コロナウイルスの感染拡大は同国の経済に大きな打撃を与え、政府はこの2年間の経済損失を140億ドル(1.7兆円)と見積もっている。

またスリランカ政府は外貨を獲得できないプロジェクトに数十億ドルを投資し、深刻な対外債務問題を引き起こした。先述の通り、同国は今年、対外債務を70億ドル近く処理しなければならない。

中央銀行によると、2月のインフレ率は17.5%で、1月から0.7%上昇した。

ラージャパクサ大統領は自国通貨のスリランカ・ルピーを為替相場ではなく政府の判断で変動させることを認めているため、スリランカ・ルピーは今後数カ月でさらに急落し、物価や人件費を押し上げると予想されている。

一方、同国のカトリック司教協議会は31日、政治家に結束を呼びかけた。

同協議会は声明の中で、「与野党は対立するのではなく協力して問題に対処しなければならない」と述べ、「責任のなすりつけ合いを今すぐやめなさい」と非難した。「スリランカは崖っぷちに立たされています。破綻すれば、国民に取り返しのつかない傷を負わせることになります」

また協議会はカトリックの関係機関や個人に対し、危機の最前線にいる低中所得者層に支援を提供するよう呼びかけた。

スリランカの人口2,200万人のうちローマ・カトリック教徒は約6%で、仏教徒が70%以上を占めている。教会はこれまでにも社会問題、教育、福祉、芸術の分野で積極的に発言してきた。

地元メディアによると、教会関係者は一般的に影響力があり、国の指導者から尊敬を集めているという。

2022年3月25日/スリランカ、首都コロンボのガソリンスタンド前(Getty Images/AFP通信)
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