◎数カ月にわたる激しい抗議デモの末、デモ隊は9日に大統領と首相両公邸を占拠した。
2022年7月10日/スリランカ、首都コロンボの大統領公邸のプール(Eranga Jayawardena/AP通信)

スリランカの首相府は10日、抗議デモに屈し辞意を表明したラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領が辞任すると認めたと発表した。

大統領公邸を占拠したデモ隊はラジャパクサ氏が辞任するまでプールで泳ぎ、居間でくつろぎ、昼寝をし、飯を食い、トランプを楽しむと誓っている。

ラジャパクサ氏とウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)首相は2カ月以上続いた抗議デモに屈し、辞意を表明した。

議会議長のアベイワデナ(Mahinda Abeywardana)氏は9日、ラジャパクサ氏は7月13日に辞任すると発表していた。

しかし、デモ隊はこの発表に懸念を表明し、ラジャパクサ氏とウィクラマシンハ氏の辞任を確認するまで公邸に居座るとしている。

首相府の報道官は10日、「大統領府から、ラジャパクサ氏は13日に正式に辞任すると連絡を受けた」と説明した。しかし、ラジャパクシ氏の行方は分かっておらず、記者会見も行っていない。

スリランカの憲法によると、大統領の辞任は本人が議会議長に辞表を提出した時に初めて認められるという。大統領と首相が辞任した場合、議会議長のアベイワデナ氏が暫定大統領に就任する。

ウィクラマシンハ氏も辞任の意向を示している。

ラジャパクサ氏の所在は明らかにされていないが、AP通信などによると、同氏は海軍の保護下に置かれているという。BBCニュースは政府筋の話を引用し、「ラジャパクサ氏は海軍の船に乗り、領海内の安全な場所に避難した」と報じている。

5月に辞任したマヒンダ・ラジャパクサ(Mahinda Rajapaksa)前首相も海軍基地に避難している。

数カ月にわたる激しい抗議デモの末、デモ隊は9日に大統領と首相両公邸を占拠した。

デモ隊は首相公邸とウィクラマシンハ氏の私邸に火を放ち、焼き払った。報道によると、死傷者は確認されていないという。

スリランカは現在、隣国インドの信用枠40億ドルで何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。

国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。

大統領公邸に入居したデモ隊は両首脳が辞任するまでのんびり過ごすと表明している。

AFP通信の取材に応じた大学生は、「闘いはまだ終わっていない」と語った。「あの卑怯者は我々が去ったら辞任を撤回するでしょう...」

多くの専門家がスリランカの現状を「極めて不安定」と指摘し、「大統領と首相が退陣しても問題が解決するという保証はなく、野党議員で構成されるであろう新連立政権は極めて難しいかじ取りを強いられる」と指摘している。

野党党首や高官は10日、新政権発足後の体制や問題解決に向けた取り組みなどについて協議した。

暫定大統領に就任すると見込まれているアベイワデナ氏はBBCニュースのインタビュー中で、「遅くとも、ラジャパクサ氏の辞任から1週間以内に新連立政権を発足させなければならない」と語った。

一方、現政権の閣僚は同国が置かれている苦境について、「コロナの感染拡大で観光業が深刻な影響を受け、外貨を失った」と主張している。

9日の大統領公邸占拠と首相公邸炎上は数カ月続いた激しいデモの集大成とみなされている。

デモ隊は首都コロンボの大統領府近くに陣取った警察のバリケードと放水砲を突破し、公邸になだれ込んだ。

SNSには公邸内のジムで身体を鍛える人、プールで泳ぐ人、ポーカーを楽しむ人、昼寝をする人、記念撮影する親子連れの写真や動画が数えきれないほど拡散している。

デモに参加した市民の大半が燃料や食料の購入に苦労しているため、きらびやかな輝きを放つ大統領公邸に多くの批判が集まった。

ロイター通信によると、ラジャパクサ氏は抗議デモが過熱することを予想し、早めに公邸を明け渡したという。

2022年7月10日/スリランカ、首都コロンボの大統領公邸に入居した人々(Eranga Jayawardena/AP通信)
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