◎大統領公邸を制圧したデモ隊は執務室でくつろぎ、芝生広場でメディアにダンスを披露し、プールに飛び込んだ。
2022年7月9日/スリランカ、首都コロンボの大統領公邸のプール(Eranga Jayawardana/AP通信)

スリランカの野党は9日、ラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領とウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)首相が辞意を表明したことを受け、新政権樹立に向けた取り組みを開始すると発表した。

地元メディアによると、野党は10日に会合を開く予定だという。

大統領府周辺で2カ月以上野営していたデモ隊は、首都コロンボに押し寄せた数万人の抗議者を引き連れ、大統領公邸、首相公邸、大統領執務室、プール、芝広場などを占領した。

首相公邸は暴徒化したデモ隊に焼き尽くされ、黒焦げになったと伝えられている。ウィクラマシンハ氏とその家族は私邸もしくは別の場所に避難したとみられる。

大統領公邸を制圧したデモ隊は執務室でくつろぎ、芝生広場でメディアにダンスを披露し、プールに飛び込んだ。

プールで泳いだという男性はAP通信の取材に対し、「ラジャパクサが辞任するまで居座る」と述べ、他の抗議者から喝采を浴びた。「あの男は詐欺師であり、デモが落ち着いたとたん、やっぱり続投すると主張する可能性があります。あの男が辞めるまで私たちもやめません」

ラジャパクサ氏は7月13日に辞任する予定である。

一方、多くの野党議員が「すべての野党の力を結集すれば議会過半数を獲得できる」とし、ラジャパクサ氏の与党を除く新連立政権を発足させるべきと主張している。

野党は9日に相次いで声明を発表。10日の会合に期待を表明した。

ウィクラマシンハ氏は国会が新政権を承認すれば、速やかに退陣するとし、その数時間後、ラジャパクサ氏も辞意を表明した。

同国の憲法によると、大統領と首相が辞任した場合、議会議長のアベイワデナ(Mahinda Abeywardana)氏が暫定大統領に就任する。

大統領公邸を占領したデモ隊はSNSで執務室の様子をライブ配信したり、プールで平泳ぎを披露したり、豪華なベッドに横たわったりした。あるグループはジムで体を鍛え、お茶を飲み、くつろぐ様子をツイッターに投稿している。

ラジャパクサ氏の所在は明らかにされていない。大統領府報道官は声明で、安全な場所に避難しているとだけ述べた。

暫定大統領に就任すると思われるアベイワデナ議長は9日、ラジャパクサ氏と電話で話したと述べたが、どこにいるかは分からないと説明した。

一方、首相府の報道官によると、首相公邸を焼き払ったデモ隊はウィクラマシンハ氏の私邸にも火を放ったという。ウィクラマシンハ氏の所在も明らかにされていない。

スリランカは現在、隣国インドの信用枠40億ドルで何とか食いつないでいる。政府は今年返済期限を迎える対外債務70億ドルの返済を停止し、債務不履行に陥った。

国の信用は外貨準備の枯渇と債務不履行で失墜し、信用取引で燃料を販売してくれる取引先は激減した。政府は石油貯蔵施設が空になりかけているとして、燃料の一般販売を停止している。

ウィクラマシンハ氏はスリランカを「破産国家」と呼び、IMF(国際通貨基金)との交渉がうまくいっていないことを認めていた。

スリランカの債務はラジャパクサ氏率いる前政権の「後先考えない無謀な減税」「外貨を獲得できない無駄な施設への投資」「意味不明な政策」、中国の「債務トラップ」の影響で膨れ上がり、債務不履行に陥った。

ラジャパクサ氏の兄弟であるマヒンダ・ラジャパクサ(Mahinda Rajapaksa)前首相は5月に辞任している。

2022年7月9日/スリランカ、首都コロンボの首相公邸近く(Eranga Jayawardana/AP通信)
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