◎デモ隊は致命的な経済危機を招いたラジャパクサ大統領の辞任を要求している。
2022年5月12日/スリランカ、首都コロンボの大統領府、ラジャパクサ大統領(右)とラニル・ウィクラマシンハ氏(Sri Lankan President's Office/AP通信)

スリランカのラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領は12日、深刻な経済危機への対応を強化するとして、新首相を任命した。

野党のベテラン政治家であるラニル・ウィクラマシンハ(Ranil Wickremesinghe)氏は党派を超えた新政権を率いる予定である。

しかし、デモ隊は致命的な経済危機を招いたラジャパクサ大統領の辞任を要求しており、大統領が去るまで抗議を続けると誓っている。

ラジャパクサ(Mahinda Rajapaksa)首相は今週、デモ隊とラジャパクサ派の乱闘で死者が出たことを受け、辞任した。一連の争乱ではこれまでに少なくとも9人が死亡、200人以上が負傷したとされる。

ラジャパクサ大統領は11日のテレビ演説で新首相を選び、新内閣を発足させると発表していた。

ウィクラマシンハ氏は首相を5度務めているが、任期を全うしたことはない。

一部の専門家は、「ウィクラマシンハ氏はラジャパクサ兄弟と親しく、危機が悪化した時にラジャパクサ家を保護してくれると考え、新首相に選んだ可能性がある」と指摘している。

野党とデモ隊が新内閣に納得する可能性は低いと思われる。

全国を対象とする夜間外出禁止令は12日朝に解除されたが、午後に再び適用された。

スリランカは1948年の独立以来最悪の経済危機に直面し、500億ドルにのぼる対外債務のうち70億ドル近くを今年中に返済しなければならない。しかし、外貨準備は底をつきかけている。

政府は輸入品の代金を支払うことができず、食料、燃料、医薬品、その他のありとあらゆる日用品が不足している。国民は食料品店に列を作り、調理用のガスを探し求めている。

首都コロンボでは夜間外出禁止令が解除される前から、多くの住民がガソリンスタンドの前に列を作っていた。

SNSにはウィクラマシンハ氏の首相就任に疑問を投げかける投稿が多数寄せられている。

巧みな戦術家として知られるウィクラマシンハ氏もここ数年、国民の承認率低下に悩まされてきた。前回の選挙では、かつて与党だった同氏の政党はわずか1議席(本人のみ)にとどまった。

議席を失った大きな理由は、「野党でありながらラジャパクサ家と親密であること」と指摘されている。

ラジャパクサ大統領はデモ隊の要求を却下し、権力の座にとどまる可能性が高いとみられる。

デモ隊はラジャパクサ大統領の過去の不作為だけでなく、その行動と傲慢な態度にも反発している。

ラジャパクサ大統領は、大統領権限の一部を議会に移譲すると申し出たが、詳細は明らかにしなかった。

デモ隊はラジャパクサ大統領では危機に対応できず、事態を悪化させると主張している。

コロンボの抗議に参加した女性は11日に放送された英BBCニュースのインタビューの中で、「あなたはこの30日間、どこにいたのですか?」と語った。「国は行き詰まっています。あなたはそれを理解していますか?」

デモ隊の一部はラジャパクサ家を含む政府高官の自宅に火を放ち、焼き払った。

暴力は9日と10日の両夜に報告された。コロンボ近郊にあるラジャパクサ前首相の息子が所有するリゾートホテルも炎上した。

報道によると、ラジャパクサ前首相とその家族は身の安全を守るために、北東部の海軍基地に逃げ込んだという。

裁判所は前首相とその息子、および同氏の友人や知人少なくとも15人の出国を禁じている。

スリランカを20年近く率いてきたラジャパクサ兄弟は「無謀な減税」「外貨を獲得できない無駄な施設への投資」「意味不明な政策」、そして中国の「債務トラップ」に見事に引っ掛かり、主要な港湾インフラを中国に引き渡し、国を借金漬けにした。

2022年4月12日/スリランカ、首都コロンボの大統領府前(Ishara S. Kodikara/AFP通信/Getty Images)
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