◎ドゥテルテ大統領は先月、来年の副大統領選に立候補すると発表していた。
2021年9月15日/フィリピン、首都マニラの大統領宮殿、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(Karl Alonzo/Malacanang Presidential Photographers Division/AP通信)

10月2日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は来年の副大統領選挙に立候補する計画を取りやめ、今期限りで政界を引退すると発表した。

ドゥテルテ大統領は記者会見で、多くの有権者が副大統領選への出馬に反対していると述べた。「フィリピン人の大多数が私の立候補に反対しています。私は国民の意思に従います。私は今期限りで政界から引退すると宣言します」

ルールにとらわれない政治スタイルと致命的な麻薬組織の取り締まりで知られるドゥテルテ大統領は先月、与党PDP-ラバン党の指名を受け入れ、来年の副大統領選に立候補すると発表した。この決定は厳しい取り締まりを「人災」と表現する多くの反対派を激怒させ、長年ドゥテルテ大統領の補佐官を務めたボン・ゴー上院議員も懸念を表明し、大統領選不出馬を決めた。

フィリピンの憲法は大統領の任期を6年1期限りとしている。

元大統領が下位の役職に立候補し勝利を収めたケースは2件存在するが、副大統領になった元大統領はいない。ドゥテルテ氏が副大統領選に勝利し、その後次期大統領が任期中に死亡もしくは何かしらの理由で無能力になった場合は、再びドゥテルテ氏が指揮を執ることになる。

この決定は、現在ダバオ市の市長を務めるドゥテルテ大統領の娘のサラ・ドゥテルテ氏の大統領選出馬を後押しする可能性がある。現地メディアによると、サラ市長は多くの支持者から父親の跡を継ぐよう勧められているという。

しかし、サラ市長は父親が副大統領選出馬を表明した直後、大統領選には立候補しないと発表した。

サラ市長は父親の政界引退発表後、ダバオ市の市長選に立候補する書類を提出したが、一部の地元メディアは市長は決定を取り消し大統領選に立候補する可能性があると報じた。

ドゥテルテ大統領は2016年に就任し、すぐに麻薬組織と違法薬物の取り締まりを強化した。これにより、軽微な犯罪を含む薬物関連の容疑者6,000人以上が死亡し、西側諸国と人権団体は強い懸念を表明した。

国際刑事裁判所(ICC)は違法な取り締まりの調査を開始したが、ドゥテルテ大統領はICCの調査官の入国を許可しないと誓っている。

ドゥテルテ大統領はダバオ市の元市長、検察官、議員などを歴任し、ハリウッドスターのクリント・イーストウッド氏が演じた法律をほとんど考慮しない映画キャラクター「ダーティハリー」を模して「ドゥテルテハリー」と呼ばれていた。

多くの専門家が、ドゥテルテ大統領は政界引退後、多くの訴訟に直面すると予想している。

しかし、人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのカルロス・コンデ氏は、「ドゥテルテは自分の身を守ってくれる次期大統領(娘)を擁立し、影響力を保持するだろう」と予想した。「次期大統領がICCの調査と元大統領に対する訴訟を却下すれば、ドゥテルテは安泰です」

フィリピンの大統領選は来年5月9日に実施される予定。ドゥテルテ大統領と決別したPDP–ラバン党のマニー・パッキャオ上院議員が出馬を表明している。

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