◎北朝鮮は寧辺原子力研究センターを核計画の「中心」と呼んでいる。
2021年9月14日/北朝鮮の寧辺(ねいへん)原子力研究センターを捉えた衛星画像(Maxar Technologies/AP通信)

国際研究機関が公表したレポートによると、北朝鮮は寧辺(ねいへん)原子力研究センターのウラン濃縮プラントを恐らく拡張しているという。

米カリフォルニア州モントレーに本拠を置くミドルベリー国際研究所の専門家チームはレポートの中で、「寧辺原子力研究センターとその周辺を捉えた衛星画像を精査した結果、北朝鮮は兵器級ウランの生産量を25%増やそうとしている可能性があるという結論に達した」と述べた。

レポートによると、9月1日に撮影された衛星画像には、寧辺のウラン濃縮プラントの隣接地で進められている開発の様子が記録されていたという。当局はプラントを拡張するために樹木を伐採し、建設用の掘削機を準備していた。

また、9月14日に撮影された衛星画像には、プラントの隣接地を取り囲む壁や基礎作業の様子などが写っていた。

ミドルベリー国際研究所のジェフリー・ルイス氏は、「プラントの拡張面積は約1,000㎡で、ウラン濃縮用の遠心分離機少なくとも1,000基を置くのに十分なスペースを確保できるため、当局は高濃縮ウランの生産能力を25%増強できる」と述べた。

核兵器は高濃縮ウランまたはプルトニウムのいずれかを使用することで製造可能。北朝鮮は寧辺にこの両方を生産する施設を持っている。国際原子力機関(IAEA)は8月末に公表した年次報告書の中で、「寧辺原子力研究センターの原子炉は今年7月初旬から冷却水を排出し、稼働していることを示唆している」と述べていた。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用

北朝鮮は寧辺原子力研究センターを核計画の「中心」と呼んでいる。

金正恩党 総書記は2019年初頭に行われた米朝首脳会談の中で、アメリカが北朝鮮に対する制裁措置を緩和した場合、寧辺を解体すると申し出た。

しかし、ホワイトハウスは金正恩の提案を非核化に向けた重要なステップとは見なさず、提案を拒否した。アメリカと韓国の一部の専門家は、北朝鮮は複数のウラン濃縮プラントを密かに運営していると考えている。

韓国軍の最高幹部は2018年、北朝鮮はすでに最大60発の核兵器も保有している可能性があると語った。北朝鮮が製造できる核兵器は1年あたり6発から最大18発と見積もられている。

北朝鮮は先週、弾道ミサイルと巡航ミサイルを東海側に向けて発射し、日米韓を挑発した。北朝鮮の弾道ミサイルと巡航ミサイルはそれぞれ核兵器化できると考えられている。

金正恩は国内の食料供給がひっ迫しているにもかかわらず、核開発を強化し、頻繁に軍事パレードを開催している。韓国当局によると、北朝鮮の国民は1990年代に発生した大飢饉に匹敵する飢餓に直面する可能性があるという。

1994年から1998年の間に発生した大飢饉では200万~350万人(推定)が餓死もしくは栄養不足に関連する病で亡くなったと伝えられている。

2021年9月15日/北朝鮮の某所、ミサイル発射テストの様子(韓国中央通信社/韓国通信社/AP通信)
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