◎金正恩はアメリカの敵意に対抗するために、アジアのライバルとアメリカを捉える核とミサイル開発を最大限強化すると誓約した。
◎韓国のアナリストは今回の軍事パレードについて、「ジョー・バイデン次期大統領に圧力をかけ、交渉を有利に進めたいと考えているのだろう」と述べた。
2021年1月14日 AP通信/北朝鮮、平壌、公開された巨大ミサイル

1月14日、北朝鮮の金正恩は開発中の弾頭ミサイルやその他の兵器類を公開し、朝鮮労働党大会で示した核計画の開始を世界に宣言した。

朝鮮中央通信は報道の中で、「金正恩 党総書記はアメリカの敵意に対抗するために、アジアのライバルとアメリカを捉える核とミサイル開発を最大限強化すると誓約した」と述べた。

また、軍事パレードを見学した市民は、「党総書記バンザイ!」「永遠の書記長、輝く太陽!」などと叫び、涙を流す者も少なくなかったという。

金正恩は1月12日に終了した朝鮮労働党大会の中で、「コロナウイルス関連の国境閉鎖、昨年夏の台風被害、アメリカを中心とした核の野心に対する経済制裁から国を救う」と誓約し、新5カ年計画を発表した。なお、同大会で金正恩は党総書記に選出されている。

韓国のアナリストは、「北朝鮮の経済は1990年代の水準まで悪化しており、1994年頃から発生した大規模な飢饉に相当する食糧危機が発生する可能性もある」と指摘している。

1994~1998年の間に発生した飢饉では200万~350万人(推定)の市民が餓死もしくは栄養不足に関連する病で亡くなったと伝えられている。

金正恩は経済の後退を止めるためにアメリカのトランプ大統領とハイレベルな首脳会談を実施したが、二人の仲は2019年に破綻し、キムは何一つ成果を上げることができなかった。

韓国のアナリストは今回の軍事パレードについて、「ジョー・バイデン次期大統領に圧力をかけ、交渉を有利に進めたいと考えているのだろう」と述べた。

バイデン氏は以前、金正恩を「凶悪犯」と呼び、完全なる非核化を約束しない限り交渉には応じないと述べている。

朝鮮中央通信は、黒い毛皮の帽子とトレンチコートを颯爽と着こなす金正恩の写真を公開し、「数万人の市民が輝く笑顔と歓声で党総書記を称えた」と報じた。

2021年1月14日 ロイター通信/北朝鮮、平壌、金正恩

朝鮮中央通信によると、軍隊が「世界で最も強力な潜水艦発射弾道ミサイルおよび先進的な戦略核兵器」と兵器の概略を説明すると、会場は大歓声に包まれたという。

また軍隊は、「私たちの領土外の敵を先制的かつ完全に破壊することができる他のミサイルを開発した」と述べた。ただし、この説明が大陸間弾道ミサイル(ICBM)についてのものかどうかは明らかにされていない。

北朝鮮は昨年10月の軍事パレードで、過去最大規模のICBMと思われるミサイルを公開した。専門家は、2017年のミサイル発射実験でアメリカ本土の中枢に到達するミサイルの能力が示されたと指摘している。

朝鮮中央通信は今回のパレードの映像を公開しておらず、金正恩が演説したかどうかは明らかにされていない。

また、米韓の軍隊は公開された兵器の評価をまだ発表しておらず、朝鮮中央通信が報じた通りのミサイルかどうかは不明である。

金正恩は党大会の中で、ICBM、新しい戦術核兵器と弾頭、原子力潜水艦、偵察衛星、超音速兵器など、より洗練された軍事兵器を開発すると述べた。

北朝鮮がそのような兵器を開発できるかはどうかは不明である。ただし、金正恩および前任者たちが兵器開発に力を入れてきたことは事実であり、近隣諸国は警戒を強めている。

韓国のアナリストは、「水中(潜水艦)から発射されるミサイルは事前に検知することが難しく、北が運用システムを取得すれば大きな脅威になる」と警告した。

2020年1月12日 AP通信/北朝鮮、金正恩

金正恩の変遷

・2011年12月17日、最高指導者に就任。

・2011年12月24日、朝鮮人民軍の最高司令官に就任。

・2012年1月9日、金正恩を称え、忠誠心を示す大規模な集会が開催される。

・2012年4月11日、「永遠の書記長」に就任。

・2012年4月13日、国防委員会委員長に就任。

・2012年4月15日、金日成生誕100周年を祝う軍事パレードを開催。

・2012年7月、朝鮮人民軍の元帥に就任。

・2012年7月、楽団のコンサートを鑑賞。金正日との違いを世界にアピールした。

・2012年11月、全長500m(推定)のプロパガンダメッセージを世界に公開。そこには「金正恩長老、輝く太陽!」と書かれていた。

・2012年11月30日、中国の李建国と会談。

・2014年3月9日、最高人民会議の代表を決める強制国民投票が実施され、金正恩は国防委員会の初代議長に就任した。(投票率100%、反対票ゼロ)

・2016年6月29日、国務委員会の議長に就任。

・2017年9月、地下核実験を決行。

・2018年3月、中国の習近平 国家主席と会談

・2018年4月27日、南北首脳会談。北朝鮮の指導者が韓国の領土に入ったのは朝鮮戦争終結以来初めてだった。双方は、朝鮮戦争休戦協定を完全な平和条約に転換し、65年後に朝鮮戦争を正式に終結させることに合意した。

・2018年5月26日、南北首脳会談。

・2018年6月12日、米朝首脳会談。アメリカのトランプ大統領は韓国との「挑発的な」合同軍事演習を中止すると発表した。

・金正恩とトランプ大統領は共同声明に署名し、北朝鮮の安全保障、新たな平和関係の構築、朝鮮半島の非核化、兵士の遺骨の回収、高官によるフォローアップ交渉の継続に合意した。

・2018年8月13日、南北首脳会談。

・2018年9月18日、南北首脳会談。

・2019年2月27日~28日、米朝ハノイサミット。トランプ大統領は声明で、「北朝鮮が経済制裁の早期終了を望んだため、首脳会談は短縮された」と発表した。

・2019年4月25日、ロシアのプーチン大統領と会談。

・2019年6月30日、米朝首脳会談。トランプ大統領と金正恩は握手を交わした

・2019年10月5日、アメリカと北朝鮮の高官レベルの交渉が始まったが、1日後に決裂した。

・2020年4月、約3週間公の場から姿を消したことで「死亡説」が流れた。

・2020年8月、妹の金与正を事実上の副司令官に任命。

・2020年9月5日、台風メイサーク(9号)の被災地を視察。

・2020年10月、コロナウイルスとの戦いを制したと宣言。

・2021年1月、第8回朝鮮労働党大会で党総書記に就任。

・北朝鮮の核戦力は、爆弾15~60発、水素爆弾を含むミサイルタイプを数基保有していると考えられている。

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