◎小麦の世界市場の取引価格はこの5カ月で約60%急騰し、パン、麺、その他の食品の価格を押し上げた。
2018年8月20日/インドの小麦農家(Getty Images/AFP通信)

インドの小麦輸出禁止表明を受け、世界の小麦取引価格が急騰している。

シカゴ商品取引所の小麦先物価格は5.9%上昇し、ここ2カ月の最高値を更新した。

インドの小麦価格は過去最高値を更新し、一部のスポット市場は政府が定める最低支持価格を大きく上回っている。

これは干ばつに伴う国内生産量の減少、コロナウイルスの拡大時に実施した穀物の無料配布、ロシアのウクライナ侵攻が原因と考えられている。

小麦の世界市場の取引価格はこの5カ月で約60%急騰し、パン、麺、その他の食品の価格を押し上げた。

インド政府は輸出を禁止する一方、契約済みの取引と、食料安全保障上の理由で小麦の輸入を求める国への輸出は「まだ」認めるとしている。

また政府は、輸出禁止は永久に続くものではないとしている。

主要国の農相はインドの決定を批判した。

ドイツ農相は14日の記者会見で、「小麦生産国が自国の食料安全保障を理由に輸出を停止すれば、世界の食料危機は悪化する」と警告した。

インドは世界第2位の小麦生産国だが、そのほとんどを国内市場で消費しており、ロシアやウクライナなどの主要輸出国に比べると輸出量ははるかに少ない。

しかし、ウクライナ侵攻の影響で小麦の供給量は激減した。また、主要生産国のひとつである米国の小麦農家も天候不良の影響を受けているため、インドはそれを補うと期待されていた。

国連によると、世界の食料価格は3月に過去最高を記録した。

ヒマワリ油やトウモロコシの主要生産国であるウクライナの貿易停止で代替国に取引が集中し、価格を押し上げている。

4月の食料価格はやや落ち着いたが、前年同月と比べると30%近く高い。

エネルギーと肥料価格の高騰も深刻で、低中所得者層、特に輸入に頼っているアフリカ諸国の消費者は輸入品とガソリンの値上げに直面している。

FRB(米連邦準備制度理事会)や英イングランド銀行などの主要中央銀行は、インフレを抑えるために金利の引き上げを余儀なくされた。

その結果、借入コストの上昇が世界経済の成長に打撃を与えるという懸念が生まれた。多くのアナリストが世界規模の景気後退を警告している。

ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン(Lloyd Blankfein)前CEOは15日、米国は景気後退に陥るリスクがあるとの見解を示した。

ゴールドマン・サックスのエコノミストは同日、米国の今年と来年の経済成長率予測を下方修正した。

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