◎インドの小麦農家は記録的な熱波に見舞われ、生産が滞っている。
2018年8月18日/インドの小麦農家(Channi Anand/AP通信)

インド政府は13日、国内の小麦価格が高騰していることなどを受け、小麦の輸出を禁止すると発表した。

インドの小麦輸出量はロシアやウクライナに比べるとはるかに少ないが、小麦の世界供給がひっ迫している中での輸出禁止措置は市場価格をさらに押し上げる可能性があると懸念されている。

主要国の農相はインドの決定に深刻な懸念を表明した。

ドイツ農相は14日の記者会見で、「小麦輸出国が市場から撤退すれば、危機はさらに悪化する」と警告した。「ドイツはG20のメンバーであるインドに責任を果たすよう求めます」

インド首相府の報道官は14日、「食料安全保障上の理由で小麦の輸入を求める国への輸出はまだ許可されている」と説明した。また輸出禁止は永久に続くものではなく、修正される可能性もあるとした。

13日に告示された官報には、「小麦価格の高騰はインドと近隣の脆弱な国々の食料安全保障を脅かす」と記載されている。

政府関係者によると、今年の国内の小麦生産量は干ばつなどの影響で激減しているという。

インドの小麦価格は過去最高を更新し、一部のスポット市場では政府が定める最低支持価格2万150ルピー(約3万3000円)を大きく上回るトン当たり2万5000ルピー(約4万2000円)に達した。

アルジャジーラは政府高官のコメントを引用し、「食料価格の全体的な上昇はインフレ圧力を高めており、政府は小麦の輸出を禁止せざるを得なかった」と報じた。

ムンバイの貿易ディーラーは輸出禁止にショックを受けている。

あるディーラーはSNSに、「市場関係者は2〜3ヶ月後に輸出規制がかかると予想していた」と投稿している。

食料とエネルギー価格の高騰により、インドの年間小売インフレ率は先月、8年ぶりの高水準に達した。

インドの小麦農家は記録的な熱波に見舞われ、生産が滞っている。また、コロナウイルスが拡大した際、推定8億人の低中所得者層に穀物を無料配布したことも影響したとされる。

世界を代表する穀倉地帯のひとつであるウクライナの輸出は戦争によりほぼ停止している。

ウクライナが侵攻以前に輸出していた毎月の小麦は世界の12%、トウモロコシは15%、ヒマワリ油は半分に相当する。

しかし、貿易の拠点であるオデーサやチョルノモルスクなどの港は使用不能になり、それ以来、農作物の輸出は効率の悪い陸路で行っている。

スポンサーリンク