◎この改革は、軍予算の50%以上を占める人件費と年金を削減し、軍の近代化に必要な資金を確保することを目的としている。
2022年6月19日/インド、東部ビハール州、政府の兵士採用計画に抗議するデモ(Getty Images/AFP通信)

インドの現地メディアは20日、政府が提案した兵士採用計画に反対するデモが暴動に発展したと報じた。

報道によると、いくつかの州でインターネットが遮断され、列車やバスの運行も停止したという。

デモ隊はモディ政権が先週発表した兵士雇用プログラムの破棄を求めている。国防省によると、今年、軍隊は17.5~21歳の男女4万6000人を臨時採用するとしているが、従軍期間は4年に限定され、年金も給付されない。

一部の暴徒は道路を封鎖し、列車に火を放った。

いくつかの野党はこのデモを支持している。一方、モディ(Narendra Modi)首相の与党「インド人民党」はデモ隊に落ち着きを求めつつ、計画を推し進めるとした。

このデモはウッタルプラデシュ州とビハール州で先週始まり、全国に広がった。

地元メディアによると、数千人の若者が警察に石を投げ、列車やバスを攻撃し、タイヤを燃やし、治安部隊と衝突したという。

南部テランガナ州で17日に発生した暴動では市民少なくとも1人が死亡、数人が負傷した。

いくつかの州は20日のインターネット遮断に先立ち、いくつかの規則を発表した。地元メディアによると、複数の州が大規模集会を禁じ、学校を閉鎖し、インターネットサービスを停止するよう関係機関に命じたという。

ビハール州では暴動の影響で電車少なくとも350便が運休となった。

デモ隊は政府の兵士採用計画を「アルバイト・ソルジャー計画」「正規雇用削減計画」などと呼び、厳しく非難している。

デモ隊は政府に計画を破棄し、正規雇用と年金を維持するよう求めている。

インドの小さな町や村で生活する多くの若者が給与と年金を保証されている兵士を目指して勉強する。若者たちは国に尽くす兵士を「英雄」と呼んでいる。

この計画で採用された兵士の75%は4年後に除隊する。残りはそれぞれの配属先に残るとみられる。

新兵は半年訓練を受けた後、部隊に配備される。初任給は3万ルピー(約5万2000円)。

この改革は、軍予算の50%以上を占める人件費と年金を削減し、軍の近代化に必要な資金を確保することを目的としている。

モディ政権は16日、初年度のみ新兵の採用年齢を23歳以下とすると発表した。また、軍の部隊のひとつである準軍事組織「アッサム・ライフル部隊」の空き枠を新兵のために確保するとした。

モディ政権はソーシャルメディアなどで4年従軍した者は警察や民間企業の就職活動で有利に立てると説明し、退役後も仕事を失うことはないとしている。

地元メディアによると、モディ氏は警察部門に4年で退役した兵士を雇うよう求める予定だという。

一部の専門家は、「この計画は軍の近代化ではなく、弱体化につながる」と警告している。

退役少将のシン(Sheonan Singh)氏はSNSに、「これは愚かな計画であり、軍を弱体化させる可能性がある」と投稿した。「節約には賛成しますが、兵士を犠牲にすべきではありません。経験豊富な兵士と半年訓練を受け3年後には退役するアルバイト兵が同じだと思っているのですか?」

計画を擁護する退役兵もいる。「4万6000人の25%は退役しません。つまり、より有能な25%を残しその他を手放せば、軍はよりスマートになります」

2022年6月19日/インド、東部ビハール州、政府の兵士採用計画に抗議するデモ(Getty Images)
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