プラント周辺の住人が被災、数百人が病院に搬送された

7日、アーンドラ・プラデーシュ州ビシャーカパトナム市のガスプラントで漏洩事故が発生、これまでに少なくとも8人の死亡が確認され、数百人が病院に搬送された。なお、事故を起こしたプラントは「LGポリマー社」のものである。

患者の対応に当たった医師は、「プラントの近くに住む何百人もの住人が病院に搬送された。彼らの多くが目の痛みと呼吸困難を訴えている」と述べた。

ガスの漏洩はAM3:00頃に発生したものと思われる。警察関係者によると、事故は過失による可能性が高く、現在原因を調査中とのこと。

また同プラントは、全土に発令されていたロックダウン(3月24日))以来、約1カ月半ぶりに稼働を再開したばかりであった。アーンドラ・プラデーシュ州のゴータム・レディ大臣はBBCに対し、「LGポリマー社は適切な手順、ガイドラインを遵守せずプラントを再稼働させたのかもしれない」と述べた。

ビシャーカパトナム市警察のスワルー・プラニ氏は、「現在施設の立ち入り調査を行うべく準備を進めている。原因が特定されるまで、再稼働は認められない。LGポリマー社は、タンク内の一部に残っていたガスが化学反応を起こし、それが外部に漏れたと証言している」と述べた。

周辺住人が異常を察知したのはAM3:30頃だった。通報を受けた警察は現地に急行するも、既に多くの負傷者が出ていたという。プラニ氏は、「現場に到着すると、空気中に何かが含まれていることがすぐ分かった。我々も長時間そこにとどまることはできなかった」と付け加えた。

ガスが拡散され、それを大量に吸い込んだ住人たちは道端に倒れた。町は大混乱に陥り、その映像がSNS上に拡散、今も現地の悲惨な状況を伝える映像と画像が世界中で共有されている。

スチレンガス

当局は、プラント内にいたと思われる従業員の安否情報を公開していない。

漏洩したガスは約3km四方に広がったと考えられており、プラント周辺だけでなく、さらに広範囲の住人の被災が懸念されている。

同地区の保健当局によると、これまでに少なくとも1,000人が病院に搬送され、意識不明の者も多数確認されているという。さらに、通報(避難)できなかった住人が取り残されている可能性もあり、迅速な対応が必要と語った。

アーンドラ・プラデーシュ州公害防止委員会のラジェンドラ・レディ氏はBBCに対し、「漏洩したガスはスチレンだった。そして、それは通常”冷蔵保管”されているものである。我々はスチレンガスを吸引した人々が身体に受ける影響を確認し、長期的な対策を講じねばならない」と述べた。

当局はプラントから離れている地域の住人に対しても、顔を濡れた布などで覆い、身を守ってほしいと情報を発信した。

1984年、マディヤ・プラデーシュ州ボパールの化学工場で発生したガス漏洩事故により、少なくとも3,700人以上が死亡(一説には16,000人以上と言われている)、500,000人以上が被災した。これは世界最悪の産業災害、インドの歴史上最も悲惨な事故と言われている。

35年以上経った今でも、ポパールで被災した人々は「イソシアン酸メチルガス」の後遺症に苦しみ、障害を持った子供たちが大きな社会問題になっている。

スチレンが人間に与える影響

●スチレン(ガス)は、無色または淡い黄色の可燃性液体、主にポリスチレンプラスチックや樹脂の製造に使用される。また、食品、容器、合成大理石、フローリング材、使い捨て食器、家具など、用途は多岐に渡る。

●スチレンガスに汚染された空気を吸引すると、鼻やのどの炎症、咳や喘息症状を発症。吸引量が多くなると、体内で液体に戻ったスチレンが肺に溜まる可能性もある。

●大量に吸引すると「スチレン病」を発症する可能性がある。主な兆候として、頭痛、吐き気、脱力感、疲労感、めまい、意識混濁、中枢神経障害などを引き起こす。

●患者の体調(基礎疾患ありなど)によっては、不整脈、心筋梗塞などの重篤な症状を併発する恐れがある。

●いくつかの疫学研究は、スチレンに暴露すると、白血病およびリンパ腫のリスクが高まるかもしれないと指摘している。ただし、決定的な証拠は見つかっていない。

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