◎世界の石炭価格はここ数カ月で約40%増加し、インドの石炭輸入量は2年振りの低水準に落ち込んだ。
2021年9月25日/ニューヨークの国連本部で開催された第76回国連総会、インドのナレンドラ・モディ首相(Eduardo Munoz/Pool/AP通信)

インドの現地メディアによると、インド国内の石炭火力発電所の半数以上が石炭不足の影響でまともに稼働できずにいるという。

インドは国内の電力需要の約70%を石炭火力で賄っており、進行中の石炭不足と価格上昇はコロナ禍で疲弊した国の経済に深刻な影響を与える可能性がある。

電力危機は数カ月前に表面化した。

インドのコロナ患者は5月の爆発的な感染拡大以降、確実に減少し、それに合わせて経済活動が再開され電力需要は急上昇した。

電力当局のまとめによると、過去2カ月の電力消費量は2019年同時期と比較して約17%増加したという。

同時に世界の石炭価格はここ数カ月で約40%増加し、インドの石炭輸入量は2年振りの低水準に落ち込んだ。

インドの石炭埋蔵量は世界トップクラスだが、石炭火力発電所は海外の石炭に依存している。現地メディアによると、国内の石炭業者の多くが需要の爆発的な増加に頭を抱えているという。

しかし、一部のアナリストは石炭の輸入を増やすべきではないと主張した。インドのエコノミスト、オーロディーブ・ナンディ博士は地元メディアのインタビューの中で、「高価な石炭はインフレを促し、危機を悪化させるだろう」と述べた。

危機は電力だけでなく食料を含むあらゆるものに影響を与える可能性が高い。小売インフレはすでに始まっており、政府は強い懸念を表明した。

ナレンドラ・モディ首相は石炭火力への依存を減らし再生可能エネルギーへの投資を推進しているが、再生可能エネルギーだけで電力需要を賄うことはできず、供給不足は経済に深刻な影響を与えた。

電力省のR.K.シン大臣はインド新聞のインタビューの中で、「問題は5カ月から6カ月は続くと見込んでいる」と述べた。

モディ首相は温室効果ガスを大量に放出する石炭火力への依存を減らしたいと考えているが、再生可能エネルギー優先の電力供給体制で約14億人の需要を満たすことは難しいことも理解しており、頭を悩ませている。

ナンディ博士は、「電力供給をめぐる問題の規模は非常に大きく、短期的な解決策はありそうにない」と述べた。「インドは石炭火力に依存しており、風力や太陽光を含む再生可能エネルギーだけで需要を賄うことは現時点では不可能です...」

「再生可能エネルギーへの投資を進めつつ、脱石炭に向けた取り組みを慎重に進めることが重要です。いきなり石炭火力を止めれば、大変なことになるでしょう」

他の専門家も、再生可能エネルギーへの移行は慎重に進めるべきと促している。

インディア・レーティング・リサーチ社のビヴェク・ジェイン氏も、「予備電源なしで再生可能エネルギーに移行することは不可能」と強調した。

一方、インド政府によると、電力省は国営企業と協力して需要と供給のギャップを小さくしているという。また政府は、国内の炭鉱だけで発電所の運営に必要な石炭を確保したいと望んでいる。

しかし、現地メディアによると、国内の鉱山で採鉱された石炭が生産した電力を他社や個人に販売することは法律で禁じられているという。

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