◎中国共産党が昨年施行した国家安全維持法は言論・表現の自由を含む香港の民主主義を破壊し、独立系メディアを窮地に追いやった。
2022年1月3日/香港、シチズン・ニュースの創設者であるクリス・ヨン氏(右)とデイジー・リー編集長(Vincent Yu/AP通信)

1月3日、香港の独立系メディアであるシチズン・ニュースは4日にウェブサイトを閉鎖すると発表した。

創設者のクリス・ヨン氏は記者会見で、「閉鎖命令は受けていないが、独立系メディアに対する弾圧と報道環境の悪化は私たちを厳しい立場に置いた」と語った。「私たちは嵐の真っただ中にいます...」

香港の共産党当局は先週、独立系オンラインメディア「立場新聞(スタンド・ニュース)」の事務所を襲撃し、7人を逮捕した。

共産党が昨年施行した国家安全維持法は言論・表現の自由を含む香港の民主主義を破壊し、独立系メディアを窮地に追いやった。

2017年に設立されたシチズン・ニュースは香港で活動する数少ない民主化推進出版社のひとつである。同社は政治ニュース、分析記事、調査に焦点を当て、ここ数か月は弾圧に直面し職を失ったジャーナリストの避難所になっていた。

同社は2日遅くにフェイスブックを更新し、4日にウェブサイトの運用を停止すると発表したうえで、読者のサポートに感謝した。「残念ながら、私たちに迫っていたのは雨や風ではなく、ハリケーンや津波でした。過去2年間の社会の変化とメディア環境の悪化により、私たちは自分の信念を表現することができなくなりました」

香港の中国大学のジャーナリズム講師であるヴィヴィアン・タム氏は、「シチズン・ニュースは昨夏のりんご日報廃刊後もインターンの受け入れを継続してくれた」と述べた。りんご日報はジャーナリストを目指すインターン生の主要な受け入れ先のひとつだった。

シチズン・ニュースのクリス・ヨン氏は3日の記者会見で、「香港の報道の自由は大きく変わった」と述べ、昨年末の立場新聞の取り締まり後に閉鎖を決めたと明らかにした。香港警察は12月29日に立場新聞事務所を襲撃し、元取締役や編集者など合わせて7人を逮捕した。

当局は逮捕した7人のうち2人を扇動罪で起訴している。

香港警察は昨年、香港で最も著名な民主活動家のひとりであるジミー・ライ氏を逮捕し、りんご日報の資産を凍結した。ライ氏は現在服役中で、先週別の容疑で起訴された。

香港民主主義評議会のリサーチフェローであるグラシア・クォン氏はAP通信の取材に対し、「シチズン・ニュースは閉鎖命令は受けていないと言ったが、当局は間違いなく圧力をかけていた」と語った。「現在の香港でジャーナリズムを維持することは不可能です。当局は別のメディアを襲撃することでシチズン・ニュースに圧力をかけました」

香港に拠点を置くアジア出版社協会も3日の声明で、市内の独立系メディアに対する圧力を懸念していると述べた。

一方、林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は先週の記者会見で立場新聞の襲撃を擁護し、「報道を装い人々を扇動する行為を容認することはできない」と語った。

シチズン・ニュースの閉鎖により、市内で活動する主要な独立系メディアは英語の記事を提供する香港フリー・プレスと、昨年8月に拠点をシンガポールに移したイニシウムの2社になった。

シチズン・ニュースは自分たちを荒れた海をさまようディンギー(キャビンを持たない小型の船舶)に例えた。「私たちは嵐の真っただ中におり、自分たちが危機的な状況に置かれていることに気づきました。私たちはこの船に乗船している全員の安全と幸福を確保しなければなりません」

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