バングラデシュの難民キャンプで2人の陽性が確認された

当局によると、バングラデシュにある世界最大の難民キャンプで2人のコロナウイルス患者が確認された。政府の医療担当者は、「コックスバザールに収容された難民から罹患者が出てのは初、約100万人が狭いエリアに押し込められているため、蔓延のリスクが非常に高い」と述べた。

当局はBBCの取材に対し、「罹患者は治療中、約1,900人の難民を隔離し、検査を行っている」と述べた。

ロヒンギャは、ミャンマーに住むイスラム系少数民族の総称である。バングラデシュで生活しているものの、ミャンマー軍総司令官ミン・アウン・フライン氏は、彼らを自国民ではなく「不法移民」として扱っている。

周辺各国(ビルマ、タイ、マレーシアなど)から援助の手を差し伸べられたこともあったが、紛争や内戦、クーデターなどの紆余曲折を経て、彼らはどの国にも属さない「無国籍の民」になってしまった。

行き場を失った約100万人のロヒンギャ難民は、3月14日からコックスバザールの同地に収容され生活している。また、多数の難民が暮らすギリシャでも、ロックダウンの緩和に伴い、約1,600人を他国に移住させるべき、という案が持ち上がっている。

今週、ギリシャのレスポス島に到着した2人の移民からコロナウイルスが検出され、難民キャンプに入ることなく隔離された。

パンデミックのリスク

ロヒンギャ難民を援助する機関は、彼らが狭く混雑したエリアで生活し、キレイな水の使用もままならない状態にあり、いつパンデミックが起こってもおかしくないと警告している。

バングラデシュで活動する非政府組織「セーブ・ザ・チルドレン」のシャミム・ジャハン博士は、「コロナウイルスが世界最大の難民キャンプに侵入した事実を重く受け止めねばならない。これから数千、数万人のロヒンギャ難民が満足な治療を受けることもできず死亡する。同地でパンデミックが発生すれば、バングラデシュは数十年後退するだろう」と述べた。

国際救済委員会(IRC)、バングラデシュのカントリー・ディレクターを務めるマニッシュア・グラワル氏はロイター通信に対し、「コックスバザールの難民キャンプでは、1㎢あたり約70,000人(東京都の豊島区が約23,000人)が生活している。その規模は、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の約1.6倍。そして、部屋の区切り、自宅トイレ、キレイな水、アルコール消毒液、マスクといった概念は同地に存在しない」と述べた。

世代を超えた迫害、人種差別、暴力に苦しむロヒンギャの人々が満足な治療を受けられる可能性は極めて低い。当局は彼らを同地に収容、エリア外に出ることを禁じているため、都市部にウイルスが飛び火する危険性はないと思っているようだ。

ロヒンギャ難民にとって、水は手を洗うものではなく「飲む」ものである。そして、そこで暮らす人々は、世界がコロナウイルスと戦っていることも知らない。テレビ、新聞、携帯などなく、完全に隔離された状態で生活しているのだから。

しかし、ウイルスは同地にも侵入した。当局の医療関係者によると、感染経路は不明。キャンプに出入りする支援団体、その他の関係者から持ち込まれたものと想定される。いずれにせよ、無防備な100万人の難民を放置すれば、大規模なパンデミックにつながる可能性が極めて高い。

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