◎ワールドワイドパートナーの北京2022に関するツイートは東京2020に比べると明らかに少ない。
2021年2月3日/インドのダラムサラで開催された2022北京冬季五輪の開催に反対する街頭抗議(AP通信/Ashwini Bhatia)

国際オリンピック委員会(IOC)の主要スポンサーは五輪の開催に合わせて必ず宣伝活動を本格化させるが、2月4日に開幕する北京2022冬季五輪に関しては沈黙を維持している。

IOCのトップスポンサー(インテル、P&G、VISA、コカ・コーラなど)を含む13のワールドワイドパートナーは、北京2022に合わせて自社の商品を売り込みつつ大会を盛り上げると予想されていた。

<北京2022のワールドワイドスポンサー>
・コカ・コーラ
・アリババ
・アトス
・ブリジストン
・Airbnb
・アリアンツ
・インテル
・オメガ
・パナソニック
・P&G
・サムソン電子
・トヨタ自動車
・VISA

リオ五輪のスポンサーは2013~2016年の間にIOCに約10億ドル(1,100億円)支払ったと伝えられている。東京2020のスポンサー料はリオの3倍と推定されている。なお、スポンサー料はIOCの年間総収入の約18%を占めている。

米国、日本、イギリス、オーストラリア、カナダは大会に政府高官を派遣しない外交ボイコットを行う予定である。(日本は五輪委を派遣)

これらの国は少数民族ウイグル族の大量虐殺、チベットや香港で進行中の弾圧、台湾問題などで中国を非難している。

AP通信などによると、ワールドワイドパートナーの北京2022に関するツイートは東京2020に比べると明らかに少ないという。

米国オリンピック委員会の元最高マーケティング責任者であるリック・バートン氏は英BBCニュースのインタビューの中で、「スポンサーは綱渡りをしている」と語った。「北京2022を宣伝すれば、ブランドに傷をつけることになるでしょう...」

主要スポンサーは東京2020の開幕が近づくと連日ツイッターやフェイスブックを更新した。

しかし、それらのアカウントは北京2022に関する情報をほとんど発信していない。

主要スポンサーの中で特に注意深く大会を見守っているのが米国の企業である。

IOCは以前の声明で、「ワールドワイドパートナーとの契約は長期にわたり、大会の開催場所には影響を受けない」と述べていた。

しかし、米国議会に「大量虐殺国家」と名指しされた中国での五輪開催はコカ・コーラやVISAに圧力をかけた。

米国議会公聴会は昨年、インテル、P&G、Airbnb、VISA、コカ・コーラの幹部を召喚し、厳しく非難した。共和党のトム・コットン上院議員は5社の幹部に「中国共産党はウイグル人を大量虐殺したと思いますか?」と質問し、称賛された。

オメガの広報担当はBBCニュースの取材に対し、「オメガは共産党のスポンサーでなく、大会の公式タイムキーパー(IOCスポンサー)です」と強調している。

主要スポンサーは北京2022を宣伝すれば西側の圧力に直面すると考え、沈黙を守っている。

しかし、共産党を公に批判すれば中国でのビジネスに影響が出るため、立場を明確にすることは難しい。

米国五輪委の元幹部バートン氏は、「企業の沈黙は政治的な理由だけではないように思える」と指摘した。「スポンサーは半年前の東京2020に資金を投じたばかりです。そして冬季の規模は夏季ほど大きくなく、投資の規模もおのずと小さくなります」

北京2022宣伝問題はスポンサーだけでなく、中国で活動する多国籍企業にも影響をおよぼす可能性がある。

時価総額3兆ドル(340兆円)のアップルは米国と中国の間(はざま)で揺れ動いてきた企業のひとつで、そのサプライチェーンは中国の企業に大きく依存している。ティム・クックCEOは中国の問題に関して沈黙を守っており、しばしば批判されている。

オリンピックは政治の影響を一切受けないスポーツの祭典と信じられているが、スポンサーとIOCのトップスポンサーである米NBCは厳しい現実に直面している。なお、IOCは総収入の約73%を放映権料から得ている。

IOCとNBCは2014年に五輪の放映権を2032年まで延長する契約を結んでいる。契約料は76.5億ドル(約7,900億円)。NBCの契約料はIOCの総収入の約40%を占める。

一方、ドイツに拠点を置く世界ウイグル会議は昨年2月、北京2022に参加しないよう180を超える団体に呼びかけ、大会を「ジェノサイドオリンピック」と呼んだ。

2022年1月12日/中国、北京のオリンピックゾーンに設置されたマスコットと市民(Getty Images/AFP通信)
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