◎ニューサウスウェールズ州のアダム・マーシャル農業相は、「春までにネズミの数を減らさなければ、ニューサウスウェールズの農村部と農業経済は壊滅的な被害を受ける」と述べた。
2021年5月19日/オーストラリア、ニューサウスウェールズ州トッテナムの農場、ハツカネズミ(AP通信/リック・リクロフト)

報道によると、オーストラリアの農家はチューチュー鳴くネズミの大群に困惑しているという。

ニューサウスウェールズ州政府は先日放送された地元メディアのインタビューの中で、「前例のないネズミの大群とそれに伴い発生すると予想されている疫病の脅威が私たちに迫っている」と警告した。

同州のアダム・マーシャル農業相は、「春までにネズミの数を減らさなければ、ニューサウスウェールズの農村部と農業経済は壊滅的な被害を受ける」と述べた。

ネズミたちは冬の間も個体数を維持し、収穫前の小麦、大麦、キャノーラを食い散らかす恐れがある。

同州の農業協会であるNSWファーマーズによると、2021年冬の農作物はネズミの食害と疫病により、10億豪ドル(約850億円)相当の被害を受ける可能性があるという。

同州政府は、国内での使用を禁じられているブロマジオロン5,000リットルの購入手続きを終えたが、連邦政府の規制当局は、ブロマジオロンの緊急使用申請をまだ承認していない。

ブロマジオロンは強力な殺鼠剤(さっそざい)として知られているが、アメリカなどでは非常に危険な物質に分類されており、生産、保管、製造を行う施設は規制当局の監視下に置かれる。専門家は、「ブロマジオロンはネズミだけでなく、ネズミを食べる希少動物やペットも殺す可能性がある」と警告している。

2021年5月19日/オーストラリア、ニューサウスウェールズ州トッテナムの農場、ネズミをシートの上に誘導する農場関係者(AP通信/リック・リクロフト)

マーシャル農業相はインタビューの中で、「ネズミたちを駆除するためには強力な何かが必要です」と述べた。「私たちはナパーム弾を求めています。ネズミたちを忘却の彼方に吹き飛ばさなければなりません」

オーストラリアで最も人口の多いニューサウスウェールズ州の経済を支えている農場関係者は、干ばつ、火災、洪水、コロナウイルスの混乱に見舞われ、さらに、ハツカネズミがもたらす食害と疫病の危機に直面している。

地元メディアによると、干ばつ、火災、洪水の対策に精通した政府委託のアドバイザーもネズミと戦うための支援を開始したという。

ニューサウスウェールズ州中部のウェリントンで農場を経営しているジェイソン・コン氏はAP通信の取材に対し、「ネズミの死骸を毎日回収しています」と述べた。「ネズミはあなたの家の屋根裏に潜んでいます。あなたは自宅に隙間はないと信じていますが、彼らは必ず侵入します。彼らはあなたの寝顔を見ています。そして、彼らは寝ているあなたの足を噛むでしょう」

別の農場で働くコリン・ティンク氏は、牛の餌やり用のボウルに水を張ってワナを仕掛け、一晩で7,500匹以上のネズミを溺死させたと主張した。「数十匹はいるだろうと思っていましたが、まさか7,500匹もいるとは思っていませんでした...」

同州中央部の町で農場を経営するブルース・バーンズ氏は、「ネズミの死骸や屋根裏の排泄物が農場の貯水槽を汚染していた」と述べた。

バーンズ氏は国内で唯一使用を認められているリン化亜鉛の餌を使ってネズミと戦っているが、戦況は極めて厳しいという。

同州の農家は4年近く続いた厳しい干ばつに耐えてきたが、昨年と今年3月に発生した大規模な洪水で深刻な被害を受け、さらに、コロナの影響で収穫期に活躍する外国人労働者を雇うこともできず、多くの作物が放置され、腐った。

連邦政府のネズミ対策本部で戦略を検討しているスティーブ・ヘンリー博士は、春までに発生する被害を予測することは難しいと述べた。現地メディアによると、ヘンリー博士はネズミ問題を話し合うための会合を全国各地で主催しているという。

2021年5月19日/オーストラリア、ニューサウスウェールズ州トッテナムの農場、穀物の上を走り回るネズミ(AP通信/リック・リクロフト)
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