◎ミャンマーを除く東南アジア諸国連合(ASEAN)の9カ国の代表は、ミャンマー軍の指導者ミン・アウン・フライン司令官をインドネシアの首都ジャカルタに招き、ミャンマーの情勢について話し合っている。
2021年4月22日/インドネシア、首都ジャカルタのASEAN事務局(AP通信/Tatan Syuflana)

4月24日、ミャンマーを除く東南アジア諸国連合(ASEAN)の9カ国の代表は、ミャンマー軍の指導者ミン・アウン・フライン司令官をインドネシアの首都ジャカルタに招き、ミャンマーの情勢について話し合っている。

軍事政権に抵抗する野党勢力は、ミン・アウン・フライン司令官がASEANのサミットに招かれたことに強く反発し、「ミャンマーの正当な指導者は拘束されている」と主張した。

人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長、ブラッド・アダムズ氏は、「民間人の大量虐殺を主導し、残忍な取り締まりで国際的な制裁に直面しているミン・アウン・ラインをサミットに招くべきではない」と述べた。「ASEANの加盟国はこの機会を利用して、軍事政権の指導者と軍に資金を提供している企業に経済制裁を科すべきです。アウンサンスーチー氏を含む政府高官および逮捕された民間人の解放と大量虐殺を終結させるためには、より強い圧力をかけなければなりません」

野党関係者が先月設立した国民統一政府(NUG)は会談に招かれていない。ミャンマー軍は24日、NUGの閣僚26人の逮捕状を発行した。

NUGの国際協力大臣は声明で、「730人以上を殺害した殺人鬼、ミン・アウン・フラインを会談に招待するべきではなかった」と述べた。「ASEANは軍の殺し屋ではなく、民主的な選挙で選ばれた指導者と話し合うべきです」

一方、インドネシアのシンクタンク、インドネシア戦略国際問題研究所のエヴァン・ラクシュマナ氏はAP通信の取材に対し、「ASEANはミン・アウン・フライン司令官を認めたわけではない」と強調した。「軍が民間人を700人以上殺したことはソーシャルメディアや報道を通じて世界に拡散され、主要各国は様々な情報に基づきすでに経済制裁を科しています。ASEANは軍事政権を認めたわけではありません」

ASEANは軍事政権だけでなく、ミャンマーの全ての利害関係者と話し合い、暴力を終わらせたいと考えている。しかし、懐疑論者は、ASEANは厳しい現実に直面すると予想している。「ASEANは加盟国の利益と内政に干渉しないという慣習を守り、話し合いで問題を解決したいと考えていますが、ミャンマー軍の頑固さは折り紙付きで、ロヒンギャの大量虐殺に対する制裁にも全く動じませんでした」

2021年3月27日/ミャンマー、首都ネピドー、「国軍記念日」を祝う軍事パレード、ミン・アウン・フライン司令官(AP通信)

インドネシア、マレーシア、シンガポールの当局者で構成されるグループは、「軍事クーデターはミャンマーだけでなく地域全体を脅かし、各国政府の権力者から独立して行動できるASEANにも大きな影響を与える可能性がある」と主張した。「2007年に採択されたASEAN憲章には、民主主義、人権、優れた統治、法の支配を指針に含めていますが、軍事政権はこれをひとつも満たしていません...」

一方、AP通信の取材に応じたミャンマーの専門家は、「ラオス、カンボジア、ベトナムなどの権威主義的な政府は、ASEANの口先だけの指針に資本を投じるメリットはなく、軍事クーデターを政権交代と考えています」と指摘した。

24日のASEANサミットはオンラインでの参加を奨励されているが、タイのプラユット・チャンオチャ首相とフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は外相を派遣すると発表した。

インドネシアの当局者はAP通信の取材に対し、「ミャンマー軍と良好な関係を構築をしていると伝えられているタイのチャンオチャ首相の出席を期待していた」と述べた。「ミン・アウン・フライン司令官と個人レベルで話し合える首脳がいなければ、より踏み込んだ協議を行うことは難しいと思います。国連安全保障理事会は行動できませんでした。他の西側諸国の応援も期待できません。危機を打開できるのはASEANだけです」

国連の専門機関と専門家は軍事政権を積極的に非難し、関係各国により強力な制裁を科すよう呼びかけてきた。国連のミャンマー特使、クリスティン・シュラーナー・バーゲナー氏はサミットには出席しないが、副次的な協議に参加すると伝えられている。ミャンマー軍はバーゲナー氏のミャンマー訪問を拒否している。

バーゲナー氏は安全保障理事会による武器禁輸などの強力な制裁を要求しているが、ロシアと中国が確実に拒否権を行使するため、実行できる可能性はほぼゼロである。

ASEANの平和的かつ静かな対ミャンマー外交は、2008年に一定の成果を上げている。サイクロンナルギスの直撃で壊滅的な被害を受けたミャンマーに対し、ASEANと国際援助機関は支援を申し出たが、当時の軍事政権はこれを拒否した。しかし、ASEANはその後の交渉で主導権を握り、支援の門を開くことに成功している。

サイクロンナルギスはミャンマー史上最悪の自然災害で、推定20万人が死亡または行方不明になり、被害額は1兆円を超え、100万人以上が住居を失った。

2021年3月4日/ミャンマー、最大都市ヤンゴン、抗議者と治安部隊(AP通信)
スポンサーリンク