◎ペルー国民は政治危機に慣れているが、今回の騒動は1980~90年代のような紛争に発展する可能性があると懸念されている。
2022年12月15日/ペルー、南部クスコの道路、デモ隊(Getty Images/AFP通信)

ペルーボルアルテ(Dina Boluarte)大統領は17日、野党の辞任要求と非難を退け、政治危機を解決するためには議会選の前倒しが必要という見解を改めて示した。

ボルアルテ氏はカスティジョ(Pedro Castillo)前大統領の罷免に抗議する暴動で20人以上が死亡したことを受け、野党議員に議会選の前倒しを要求し、「自分が辞任しても問題は解決しない」という認識を示した。

カスティジョ氏は今月7日、議会を一時的に解散し、「特別緊急政府」を設置するとテレビ演説で発表したものの、議会の弾劾投票で罷免され、同日遅くに反逆罪で逮捕された。

その後まもなく、副大統領のボルアルテ氏が同国初の女性大統領に就任した。

デモ隊はカスティジョ容疑者の解放、ボルアルテ政権と議会の解体、解散総選挙を求めている。

ボルアルテ氏は先週、2026年7月に予定されている議会選を2024年に前倒しする意向を示し、さらに14日には2023年12月まで前出しすると表明した。

しかし、野党が多数派を占める議会は16日、議会選を前倒しする動議を圧倒的反対多数で否決し、混乱の責任はカスティジョ政権にあると非難した。

ペルー国民は政治危機に慣れているが、今回の騒動は1980~90年代のような紛争に発展する可能性があると懸念されている。この紛争による死者および行方不明者は7万人と推定されている

カスティジョ容疑者は反乱と陰謀の罪で拘留されており、捜査が続いているようだ。地元メディアによると、容疑者は議会の弾劾投票を糾弾。罪状を丸ごと否定し、大統領はまだ自分であると主張したという。

ボルアルテ氏は16日、議会の有力者および宗教指導者と首都リマで会談し、問題解決の糸口を探った。

報道によると、ボルアルテ氏らは3時間ほど協議したのち、国民との対話を促進することで一致したという。

司法長官は16日遅くの声明でデモ隊に対し、暴力を避け、当局との対話に応じるよう呼びかけた。

また長官はボルアルテ政権の閣僚がデモの現場に赴き、対話を行う予定であると明らかにした。

南部アヤクチョ州で15日に行われたデモで少なくとも8人が死亡したと伝えられている。ソーシャルメディアで共有された動画には、デモ隊が幹線道路や空港を占領する様子が映っていた。

その数時間後、ルアルテ政権の閣僚2人が辞意を表明し、混乱に拍車をかけた。教育相はツイッターに、「同胞の死を正当化することはできない」と投稿。非常事態宣言で軍と警察の権限が強化されたことを暗に批判した。

抗議デモは観光産業にも深刻な影響を与えている。

南部クスコの市長はAFP通信の取材に対し、「デモ隊が空港ターミナルを襲撃し閉鎖を余儀なくされたため、市内の観光客約5000人が足止めを食らっている」と明らかにした。

米国、欧州、日本などの観光客が影響を受けたと伝えられている。

クスコは同国で最も人気のある観光地マチュピチュの玄関口であり、毎年数十万人の観光客が訪れる。

報道によると、マチュピチュに乗り入れる鉄道も運休しており、観光客数百人が立ち往生しているという。一部の観光客はクスコに戻るために徒歩で町を離れた。

2022年12月15日/ペルー、首都リマの広場(Martin Mejia/AP通信)
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