◎最大都市サンパウロの市内で少なくとも10匹のサルがこの1週間で毒殺された。
野生の猿(Getty Images)

世界保健機関(WHO)は9日、サル痘の感染拡大が懸念されるブラジルで野生のサルが毒殺される事件が相次いでいることに悲しみを表明した。

ブラジルのニュースサイトG1によると、最大都市サンパウロの市内で少なくとも10匹のサルがこの1週間で毒殺されたという。

他の都市でも同様の事件が相次いでいると報告されている。

WHOのハリス(Margaret Harris)報道官はジュネーブの記者会見で、「サル痘の感染拡大は人間の間で起きていることを理解しなければならない」と懸念を表明した。

WHOによると、ブラジルのサル痘感染者は9日時点で1700人を超え、1人の死亡が確認された。

ブラジル保健省は先月末、41歳の男性が死亡したと報告した。この男性はリンパ腫を患い、免疫力が低下していたという。男性は南東部ミナスジェライス州の医療機関に入院していたが、敗血症性ショックで死亡した。

ハリス氏は「サル痘は動物から人間に感染することもあるが、今回の感染拡大は人間が引き起こしたものだ」と強調した。

またハリス氏はサルを攻撃しても問題は解決せず、動物を痛めつけるべきではないとした。さらに、感染者の99%が男性と性行為を行ったことがある男性であることについて、「感染者に汚名を着せてはならない」と警告した。

ブラジルでは黄熱病の流行時にもサルが襲われたという記録が残されている。

サル痘は中央・西アフリカでよくみられる感染症のひとつで、1970年にコンゴ民主共和国で初めて検出された。医療専門家によると、この重症化リスクは低く、感染者の大半は数週間で回復する。死亡率は5~10%。潜伏期間は7日~21日、ほとんどの患者が10日~14日で発症する。

サル痘の感染リスクはコロナウイルスに比べるとはるかに低く、感染者の体液や飛沫に触れると感染する恐れがある。また、それに感染した動物の肉(ブッシュミート)をしっかり過熱せずに食べても感染する可能性がある。

WHOによると、サル痘は現在約90カ国に広がり、累計感染者は2万9000人を超えたという。WHOは先月、米政府は今月初めに「公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

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