◎エクアドルの治安は南米のコカイン大国であるコロンビアやペルーに比べると良いと考えられてきたが、この数年で急速に悪化したようにみえる。
2022年11月1日/エクアドル、グアヤキルの刑務所前(Gerardo Menoscal/AFP通信/Getty Images)

エクアドルの警察当局は3日、最大都市グアヤキルの刑務所などで暴動が発生したと発表した。

同国の刑務所では麻薬カルテルとつながりのあるギャングによる抗争が相次いでいる。受刑者は銃器、手りゅう弾、ナイフなどで武装し、看守にも容赦なく攻撃を仕掛ける。

AFP通信は警察筋に話を引用し、「治安部隊は銃や爆弾で武装した受刑者に立ち向かった」と報じている。

この刑務所では2日にも抗争が発生し、受刑者2人が死亡、6人が負傷した。さらに、グアヤス州ではグアヤキルだけでなく他の都市の刑務所でも暴動が発生し、警察官5人を含む6人が死亡と伝えられている。

警察当局によると、暴動は少なくとも18カ所で発生したという。地元メディアは当局者の話を引用し、「ギャングは約1000人の受刑者をグアヤス州の刑務所から他の施設に移送する計画を阻止しようとしている」と報じた。

エクアドルの治安は南米のコカイン大国であるコロンビアやペルーに比べると良いと考えられてきたが、この数年で急速に悪化したようにみえる。

専門家によると、エクアドルは南米とメキシコの麻薬カルテルの中継地点になっているという。

ラソ(Guillermo Lasso)大統領は刑務所を含む麻薬カルテル絡みの事件を厳しく取り締まるとしているが、成果は出ていない。

政府の統計によると、エクアドルの2021年の殺人発生率は人口10万人あたり14人と2020年からほぼ倍増し、今年1月~10月にかけては10万人あたり18人に達したという。

また、2020年後半から刑務所の暴動が急増し、受刑者少なくとも400人が殺害された。その多くが首を切り落とされたり、焼かれたりした。麻薬カルテルは刑務所の職員に賄賂を渡し、銃火器を仲間に送っている。

国連の専門家チームは先月、エクアドルの刑務所で暴力が急増していることに深刻な懸念を表明し、受刑者のリハビリプログラムの欠如や訓練を受けた刑務官の不足など、制度的問題が暴力の増加を後押ししていると指摘した。

ラソ大統領は1日、グアヤス州とエスメラルダス州に45日間の非常非常を宣言し、夜間外出禁止令を発令した。

政府報道官は記者団に対し、「両州の警察を支援するために、陸軍の兵士1400人以上を派遣した」と説明した。

エスメラルダス州の刑務所では1日に受刑者が看守8人を人質に取ったが、事件は解決したと伝えられている。

10月31日にはエスメラルダス州の歩道橋に首のない死体2体が吊るされているのが発見された。

2021年11月13日/エクアドル、グアヤキルの刑務所近く(Getty Images/AFP通信)
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