感染者と死者の増加に歯止めはかからず

ブラジル国内におけるコロナウイルスの感染者数は50万人を超え、死者数も間もなく3万人の大台を突破する。24時間当たりの死者数は連日1,000人以上を記録し、パンデミックが終息する見通しは全く立っていない。

極右派のボルソナロ大統領は、一貫してコロナウイルスを軽視。勝利の日は近いと主張しているが、これに反対する国民たちは怒り、激しい抗議活動を展開している。

首都リオデジャネイロとサンパウロで発生した抗議デモの参加者は数千人規模に達した。人々はボルソナロ大統領の怠慢な姿勢を批判し、警察との全面衝突に発展している。

これに対しボルソナロ大統領は、ブラジリアで数百人の支持者に向けて演説を行った。人々は狭いエリアに密集していたが、大統領は「社会的距離の確保など必要ない。コロナは季節性の風邪であり、間もなく消えてなくなるだろう」と主張した。

極右大統領の支持者たちは、政府への軍事介入と最高裁判所閉鎖を求めている。現在、大統領に対する調査(捜査)が行われており、ボルソナロ派と司法府の間で緊張が高まっている状態だ。

31日、厚生省は24時間当たりの死者数が956人だったと発表。これにより、同国の累計死者数はフランスを上回った。しかし、同国と欧州諸国の増加率には大きな違いがある。欧州も感染者数および死者数の爆発的増加に苦しめられてたが、厳格なロックダウンと各種規制が功を奏した。

ブラジルの増加率は3月からゆっくりと増加し始め、4月に入ると勢いが増した。さらに5月、1日当たりの感染者数が2万5,000人を越える日もあった。その勢いは今も一向に衰えておらず、さらに増加するのではないかと懸念されている。

同国の専門家によると、PCR検査数が不足しているため、感染者数および死者数を把握しきれない状態だという。特に貧困エリアの感染状況は深刻。地方政府の力だけでは手も足も出ず、脆弱な医療体制も全くと言っていいほど機能していない。

ブラジル/パンデミックを放置したボルソナロ大統領の罪
コロナウイルス/増加し続けるブラジルの死者数
ブラジル/コロナウイルスに蹂躙されるアマゾン州マナウス
コロナウイルス/次の震源地、ラテンアメリカ

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ブラジルはコロナに飲み込まれる

ボルソナロ大統領は、コロナウイルスではなく、それに伴うロックダウンこそが悪と主張。封鎖に伴う経済損失は計り知れず、雇用が失わると演説した。

また、州知事による”検疫およびPCR検査の拡充と徹底”を「横暴」と指摘。中断されているカンピオナート・ブラジレイロ・セリエA(サッカーリーグ)の再開を要求した。

大統領はマスクの効果も全面的に否定している。コロナウイルスは季節性の風邪と一緒で、マスクの有無に関わらず感染し、自宅で静養すればすぐ治ると主張。さらに、数万人が集結するスタジアムでサッカーを観戦し酒を飲めば、全て元通りになるだろうと雄弁に語った。

31日、バチカンのフランシスコ教皇は、アマゾンの住民が壊滅的被害を受けている窮状に祈りを捧げ、大統領にプレッシャーをかけた。教皇は「パンデミックに厳しく責め立てられているブラジルの教会とアマゾンの社会に光と力が与えられることを望みます」と祈った。

アマゾナス州(アマゾン)で暮らす人々の大半は貧困層である。同国最大の感染源になっていると指摘する専門家も多く、医療体制は最初から機能していない状態だという。

不足する医療体制と大統領の怠慢な対応が組み合わさったことで、同国のパンデミックは制御不能レベルに到達した。厳格なロックダウンが経済活動を縮小させ、大統領の口車に乗った人々はマスクも着用せず、社会的距離を無視し街を練り歩く。

【6月1日、各国の最新情報】
●スペイン、24時間当たりの新たな死者を記録しなかったと発表。
●欧州、夏の観光シーズンに向け、レストラン、ホテル、バー、観光施設を再開。
●インド、電車および地下鉄の運行を再開。
●中国武漢、24時間当たりの新規感染者0人。
●イギリス、学校を再開。出席率は40%から70%だった。
●全世界累計感染者数610万人超、37万人以上の死亡が確認された。

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