◎中絶問題は今秋の中間選挙にも大きな影響を与えると予想されている。
2022年5月11日/ワシントンD.C.議会議事堂、民主党のヒロノ上院議員とハリス副大統領(Jacquelyn Martin/AP通信)

上院は11日、人工妊娠中絶を合法化する法案を採決し、賛成49ー反対51で否決した。

法案を提出した民主党は、共和党の議事妨害(フィリバスター)阻止に必要な60票を集めることができなかった。

中絶を非合法化する可能性がある最高裁の審理草案リーク問題はリベラル派と女性の怒りを引き起こしている。

保守的なミシシッピ州が起こしたロー対ウェイド裁判の判決を覆そうとする裁判は6月下旬から7月上旬頃に結審する予定である。

▽ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。

民主党のチャック・シューマ―(Chuck Schumer)上院院内総務は採決に先立ち、「米国民は見ている」と共和党員に呼びかけた。「国民はどの議員がどちらに投票したかを決して忘れないでしょう...」

中絶問題は今秋の中間選挙にも大きな影響を与えると予想されている。

民主党の下院議員数人は上院までデモ行進を行い、来賓席から採決の様子を見守った。

民主党の上院議員は、「中絶を非合法化することは女性だけでなく、すべての米国民に取り返しのつかない損害をもたらす」とひとりずつ共和党に訴えた。

マスト(Catherine Cortez Masto)議員は、「ほとんどの女性は中絶が合法化された時代しか知らず、その権利を奪われる可能性がある」と訴えた。「つまり、女性は男性と同じように自分の人生や身体をコントロールする権利を失うということです...」

中絶の合法化を支持する共和党のマコウスキー(Lisa Murkowski)議員とコリンズ(Susan Collins)議員は最高裁の判決に対抗できる、より調整されたアプローチを採用すべきと主張し、反対票を投じた。

コリンズ議員は声明で、「私は米国の中絶の権利の法的枠組みを確立するために、同僚と働き続けます」と述べている。

共和党員の中に中絶の非合法化を公に支持する人はほとんどいないが、民主党の法案には反対した。

共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首は採決後、記者団に対し、「これは州で対処する問題である」と語った。

全米の保守的な州は人工中絶を禁じる州法をすでに複数施行している。少なくとも13の州がロー対ウェイド裁判の判決が覆された時点で中絶を禁止するトリガー法を施行しており、他の州も同様の措置を取る可能性がある。

一方、16の州とコロンビア特別区は中絶を合法とする州法を施行している。

共和党のスーン(John Thune)議員は声明で、「この法案は極端であり、米国や世界の主要国が法律で定めている以上に中絶の権利を保障することになる」と主張した。

民主党で唯一反対票を投じたマンチン(Joe Manchin)議員も法案の適用範囲は広すぎると指摘した。

最高裁文書のリーク後、連邦議会と最高裁周辺では数千人規模の抗議集会が連日開催されている。当局は採決に先立ち議会の警備を強化した。

議会は中絶政策をめぐって何年も争う一方、多くの人が定説と信じていたロー判決を覆そうとする草案がリークしたことで、この問題は再び緊急性を帯びてきた。

両党は11月の中間選挙を前に、「自分たちはできる限りのことをやっている」と有権者に納得してもらうべく、必死に立ちまわっている。民主党は中絶の合法化を、共和党は中絶に反対する人々のために非合法化を目指す。

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