◎鳥インフルは全米47州の300以上の養鶏場で確認され、最初の感染確認から丸1年を経過したものの、終息の見通しは立っていない。
2023年1月10日/米イリノイ州のスーパーマーケット、卵12個8.79ドル(約1180円)(Nam Y. Huh/AP通信)

米国でも鳥インフルエンザが猛威を振るっている。政府の対策費用は6億6000万ドル(約890億円)に達し、この1年で殺処分されたニワトリと七面鳥は5800万羽を超えた。

専門家によると、全米の養鶏農家が受けた損失は10億ドルを軽く上回るという。

鳥インフルは全米47州の300以上の養鶏場で確認され、最初の感染確認から丸1年を経過したものの、終息の見通しは立っていない。まもなく春の渡り鳥シーズンがやってくるため、多くの専門家がさらなる感染拡大に警鐘を鳴らしている。

米国の鳥インフルは例年春に拡大し、秋には終息していた。しかし、昨年は夏の暑さを乗り越え、秋以降も各地で感染が報告されている。

今回の流行は2015年に発生した感染拡大より広い範囲に及んでいるものの、政府と業界は8年前の教訓を生かして損失を抑えることに成功したようだ。

全米七面鳥連盟の報道官はAP通信のインタビューで、「この1年、七面鳥業界は史上最悪のトラブルに見舞われ、壊滅的な打撃を受けた」と語った。

同連盟によると、この1年で殺処分されたニワトリと七面鳥は5840万羽に達したという。

鳥インフルを報告していない州はハワイ、ルイジアナ、ウェストバージニアのみ。全米最大の鶏卵生産地であるアイオワ州では1600万羽が処分された。

2015年は15州の200以上の農場で約5000万羽の鶏と七面鳥が処分されている。この時、連邦政府は鳥の処理、畜舎の清掃、農家への補償に10億ドル近くを費やした。農家も多くの費用を計上し、業界の損害額は30億ドルに上った。

今年の感染拡大は消費者にも大きな影響を与えている。

政府の最新の統計によると、1月の全米の卵価格は前年同月の1ダース1.93ドル(約260円)から4.82ドル(約650円)に跳ね上がったという。

値上がりの主な要因は殺処分による卵の供給量減と燃料・肥料・人件費の高騰だ。

1月の鶏胸肉1ポンドの価格は4.32ドルだった。これは昨年ピークの4.75ドルよりは若干下がっているものの、前年同月の1ポンド3.73ドルに比べると高い。

七面鳥の卸売価格は1ポンド1.72ドル。前年同月は1.29ドルだった。

処分された鳥の数は昨年3月の2100万羽でピークに達し、その後も処分が続いた。農家は感染予防対策を徹底しているものの、野鳥やネズミなどの対応に苦慮しているようだ。

鳥インフルの感染力は極めて強く、野鳥やネズミの糞で簡単に拡散してしまう。農家が最善を尽くしても、100%防ぐことはできない。

多くの農家が鶏舎の周囲に消毒剤を撒いたり、傾斜に入る前のシャワーを義務付けたり、出入りするトラックを消毒したりするなど、様々な工夫をしている。中には野鳥の侵入を防ぐためにレーザーシステムを導入している農場もあるという。

2023年1月10日/米イリノイ州の養鶏場(Erin Hooley/AP通信)
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