◎中絶を非合法化する可能性がある最高裁の審理草案リーク問題は多くの怒りと懸念を引き起こした。
2022年5月14日/ワシントンD.C.ナショナル・モール、中絶権の保障を求める抗議デモ(Amanda Andrade-Rhoades/AP通信)

全米で人工妊娠中絶の非合法化に反対する抗議デモが開催された。

ワシントンD.C.議会議事堂、最高裁判所、ナショナルモールなどに集まった数千人の抗議者は、「女性の選択する権利(自己決定権)」を保障するよう最高裁判事に訴えた。

デモを主催する団体によると、14日の抗議デモはNY、DC、LA、シカゴ、ハワイを含む380以上の都市や町で開催される予定だという。

中絶を非合法化する可能性がある最高裁の審理草案リーク問題は多くの怒りと懸念を引き起こした。

保守的なミシシッピ州が起こしたロー対ウェイド裁判の判決を覆そうとする裁判は6月下旬から7月上旬頃に結審する予定である。

▽ロー対ウェイド事件(1973年):最高裁は妊娠中絶を「合衆国憲法で保障される権利」と認め、堕胎禁止を初めて違憲と認めた。

デモを主催する団体のひとつWomen's Marchはツイッターに、「もうたくさんです」と投稿している。「女性に対する攻撃はもうたくさんです。私たちは、私たちの声をはっきりと伝えるために行進しています」

人権団体ウルトラバイオレットの代表は、「指導者、最高裁判事、中絶反対派に資金を提供してきた企業は私たちの声を聞け!」と声明を発表した。

民主党は11月の中間選挙に先立ち、人工妊娠中絶の権利を成文化する取り組みを推進している。一方、共和党は保守的な州の有権者を喜ばせるために、中絶の合法化を阻止すると誓った。

下院で可決された中絶を合法化する通称「女性の健康保護法案」は今週、上院共和党の議事妨害に屈し、廃案となった。

シカゴの集会に参加した女性はアルジャジーラの取材に対し、「中絶を禁止する州の女性が心配だ」と語った。「私は15歳の時に中絶しました。あの時中絶が非合法化されていたら、私は死んでいたでしょう」

ポリティコ社の最新の世論調査によると、回答者の53%がロー裁判の判決を覆すべきではないと答え、先週から3%増加した。

共和党主導の保守的な州は人工中絶を禁じる州法をすでに複数施行している。また、少なくとも13の州がロー裁判の判決が覆された時点で中絶を禁止するトリガー法を施行しており、他の州も同様の措置を取る可能性がある。

あるツイッターユーザーは、「ロー裁判が覆れば、レイプされた少女も、近親相姦で妊娠させられた処女も中絶できなくなる」と投稿し、行進に参加するよう呼びかけた。

中絶を禁じる州法の内容は州によって異なり、レイプ、近親相姦、妊婦の命にかかわるような場合の中絶は認めているものが多い。

中絶の問題は数十年にわたって争われてきた。最高裁の草案リーク後、デモの数は急増したと伝えられている。

共和党は草案リークとデモを司法への干渉・圧力と非難しているが、活動家たちは中絶に反対する保守勢力が医療機関などでしばしば暴力的な抗議を行っていることを引き合いに出し、共和党の主張を却下している。

そして多くの人が、係争中の裁判は基本的人権のひとつである自己決定権を侵害すると非難している。

ある抗議者はCBSニュースの取材に対し、「共和党は女性の基本的人権を踏みにじろうとしている」と語った。「彼らは女性を踏みにじり、レイプと近親相姦を擁護し、女性に妊娠したら黙って産めと命じようとしています」

2022年5月14日/ニューヨーク州のブルックリン橋、中絶権の保障を求める抗議デモ(Jeenah Moon/AP通信)
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