◎最初に署名した大統領令はコロナ危機への対応。その後、計15の大統領令に署名した。
◎大統領令により、全ての連邦資産および州間高速道路を通過する際のマスク着用が義務付けられた。また、社会的距離の確保に関する厳格な規則も追加される。
2021年1月21日 AP通信/ワシントンD.C.議会議事堂、演説するジョー・バイデン大統領

1月20日午後、ジョー・バイデン氏はDC議会議事堂で宣誓し、第46代アメリカ合衆国大統領に就任した。

バイデン大統領は50年近くに渡る政治キャリアの集大成を迎えた。

バイデン大統領は、まず1月6日の暴動について言及した。
「私たちは民主主義が貴重であることを再び学びました。民主主義は脆弱です。そして、アメリカの民主主義は再び動き出しました」

「ほんの数日前、暴力が議会議事堂の基盤を揺るがしました。しかし、私たちは政権交代を実行し、神の下で再び1つの国になります。私たちはアメリカのやり方で先を見据え、大胆に、楽観的に、私たちができること、しなければならないことに目を向け、実行します」

昨年の選挙キャンペーン開始以来、アメリカは2つに分断された。バイデン大統領は団結を呼びかけたうえで、「国内で続いている争いを終結させなければならない」と訴えた。

「私たちにはやるべきことがたくさんあります。スピードと緊急性をもって前進しなければなりません。アメリカはコロナから回復し、癒し、経済を構築し、そして多くを得ることができます」

2021年1月21日 Getty Images/ワシントンD.C.議会議事堂、バイデン大統領とジル夫人

バイデン大統領は前任者とは異なる表現でエイブラハム・リンカーンの言葉を引用した。
「私たちは国の統一に専念すると誓約します。課題を克服し、魂を回復し、アメリカの未来を確保するためには、言葉以上のものが必要です。1863年の元旦、エイブラハム・リンカーンは奴隷解放宣言に署名しました。私は彼の言葉を引用します。私の名前が歴史に残るとしたら、それはこの行為のためであり、私の魂はその中にあります

私はアメリカを一つにまとめ、人々を団結させ、国を団結させます。そして私はすべてのアメリカ人にこの目的の達成に向け、協力するようお願いします

バイデン大統領は史上初の女性副大統領、カマラ・ハリス氏を称賛した。
「キング牧師は私たちを見ています。108年前、何千人もの市民が選挙権を求めて行進している勇敢な女性を阻止しようとしました。そして108年後の今日、アメリカ史上初の女性副大統領が誕生しました」

ハリス副大統領はバイデン大統領の演説前に誓約を終え、初の女性、初のアジア系黒人として副大統領に就任した。

過去に類を見ない強烈な分断と暴力に直面したバイデン大統領は、ドナルド・トランプ前大統領の主要な政策を取り消すべく、大統領令への署名を開始した。

最初に署名した大統領令はコロナ危機への対応。その後、計15の大統領令に署名した。

バイデン大統領が政権公約に掲げていた気候変動(パリ協定への復帰)および移民に関する政策の見直しも早速実行された。

バイデン大統領の政権公約

新政権はコロナ制限を考慮し、式典の出席者を限定した。なお、トランプ氏は就任式には出席せず、アンドリュース空軍基地で送別会を開催したのち、フロリダ州の別荘に向かったと伝えられている。

2021年1月21日 Getty Images/ワシントンD.C.議会議事堂、演説するジョー・バイデン大統領

バイデン大統領の演説前にレディー・ガガ氏が国家を熱唱し、ジェニファー・ロペス氏とガース・グルックス氏も演奏を行った。

また22歳のアマンダ・ゴーマン氏は、1月6日の暴動後に書いた詩を朗読した。

市内のリンカーン記念館で開催されるコンサートはトム・ハンクス氏が司会を務め、ブルース・スプリングスティーン、ジョン・レジェンド、ジョン・ボン・ジョヴィ、ジャスティン・ティンバーレイク、デミ・ロヴァートが出演する。

Getty Images/ワシントンD.C.議会議事堂前、1974年8月12日、ジョー・バイデン氏

バイデン大統領はホワイトハウスの執務室で、「トランプ政権の深刻な被害を回復させるだけでなく、アメリカを前進させるために行動する」と述べた。

大統領令により、全ての連邦資産および州間高速道路を通過する際のマスク着用が義務付けられた。また、社会的距離の確保に関する厳格な規則も追加される。

同時に、コロナウイルスに対応する専門の施設が全国各地に設立され、世界保健機関(WHO)からの撤退プロセスも完全停止した

国連のアントニオ・グテーレス事務総長のスポークスマンは声明で、「WHOへの参加は、世界が協調してコロナに立ち向かううえで欠かせないこと」とアメリカの復帰を歓迎した。

バイデン氏は最重要課題の1つにあげていた気候変動と戦うと誓約し、約束通りパリ協定復帰を就任初日に決めた

また気候変動に関連するカナダ・アメリカ間のキーストーンXLパイプライン建設計画の停止も決まった。環境保護団体やネイティブアメリカンはこの石油パイプライン計画と10年以上戦っている。

ジェン・サキ報道官は記者団に対し、「大統領はカナダのジャスティン・トルドー首相と電話でこの件について話し合う予定だ」と述べた。

キーストーンXLの工事費用は推定80億ドル(8,300億円)で、カナダのアルバータ州から米の各地を経由し、南部テキサス州まで石油を運ぶ。

バラク・オバマ前大統領は建設計画を承認しなかったが、トランプ氏がこの決定を覆し、着工した。

バイデン大統領はメキシコの壁建設に関連する前政権の政策を取り消し、一部のイスラム諸国に課していたイスラム教徒の旅行制限を解除した。ただし、コロナウイルス感染拡大に伴う出入国制限は継続される。

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