◎トランプ支持者は2021年1月6日、バイデン(Joe Biden)氏の勝利を認定する投票を妨害するために議会を襲撃した。
2022年6月9日/ワシントンD.C.議会議事堂、2021年1月6日の議会議事堂襲撃事件の下院公聴会(J. Scott Applewhite/AP通信)

議会下院で9日、トランプ(Donald Trump)前大統領の支持者が引き起こした昨年1月の議会議事堂襲撃事件の公聴会が始まった。

民主党員と共和党員で構成される特別委員会は前大統領が「クーデター未遂」にかかわったとして、責任を追及する。

委員会の副議長である共和党のチェイニー(Liz Cheney)議員は、「トランプが攻撃の炎を灯した」と語った。

議長のトンプソン(Bennie Thompson)議員は、「暴動は米国の民主主義を危険にさらした」と語った。

トランプ支持者は2021年1月6日、バイデン(Joe Biden)氏の勝利を認定する投票を妨害するために議会を襲撃した。

公聴会はテレビで生中継され、トランプ氏の側近のインタビュー映像でスタートした。

バー(William Barr)前司法長官は録音映像の中で、「選挙が盗まれたというトランプ氏の主張には根拠がない」と証言した。

バー氏はインタビューの中で、「選挙に不正があったという具体的な証拠に基づかない見解に基づいて、現職政権が権力を維持するような世界には住めない」と述べている。

また、トランプ氏の娘であるイヴァンカ(Ivanka Trump)氏が、父親の陰謀説を否定したバー氏の証言を受け入れたと証言する映像も公開された。

トランプ氏はライブ中継開始前、公聴会を「捏造」と一蹴した。

共和党の顔であるトランプ氏は2024年の大統領選に立候補するとほのめかしている。また、2020年の大統領選では共和党有権者の票が不正操作されたという主張を繰り返している。

トンプソン氏は襲撃事件を「クーデター未遂の極み」と断じ、政府転覆を狙った大胆不敵な試みと語った。「襲撃はクーデター未遂の頂点であり、政府転覆を狙った大胆な試みでした」

「暴力は偶然ではありませんでした。トランプの最後の抵抗だったのです」

チェイニー氏は「議会議事堂に侵入し、何時間も法執行機関と戦った人々は、トランプが語った、選挙は盗まれたもので、自分が正当な大統領であるという言葉に突き動かされていた」と語った。

「トランプは暴徒を召喚し、攻撃の炎を灯したのです」

暴徒の攻撃で負傷した警察官のエドワーズ(Caroline Edwards)氏は、意識を失う前に暴徒から「裏切り者」「犬」と呼ばれたと証言した。

またエドワード氏は乱闘の中で「幽霊のように青白い」シックニック(Brian Sicknick)巡査を確認したと説明した。シックニック氏は事件の翌日、死亡した。

エドワード氏は当時の議会議事堂を「戦場」と呼び、「まさか米国内で戦場に身を置くことになるとは夢にも思わなかった」と語った。「警察官として、法の執行者として、自分が戦場に身を置くことになるとは夢にも思いませんでした」

事件当日、極右団体「プラウドボーイズ(Proud Boys)」を追跡していたイギリスのドキュメンタリー映画監督、クエステッド(Nick Quested)氏も証拠を提出した。

クエステッド氏は「暴れまわる反乱者の怒りと暴力に驚いた」と証言した。

事件当日、女性1人が警察官に射殺され、4人が乱闘の中で死亡した。負傷した警察官は100人超え、現場で対応にあたった警察官4人が自殺している。

共和党はこの公聴会を、11月の中間選挙とバイデン政権の政治的逆風を吹き飛ばす戦略のひとつとみなしている。

最新の世論調査によると、民主党は11月の中間選挙で下院の過半数を失い、上院も失う可能性があるという。

バイデン氏はインフレ、ガソリン価格の高騰、粉ミルク不足などの問題に直面し、支持率を落としている。

2022年6月9日/ワシントンD.C.議会議事堂、2021年1月6日の議会議事堂襲撃事件の下院公聴会、民主党と共和党の議長(手前)(Alex Brandon/AP通信)
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