◎フェイスブック社のドナルド・トランプ前大統領のアカウント停止を審査していた独立監視委員会は同社の停止措置を支持したが、「無期限の停止」は不合理であるとして、フェイスブックに具体的な停止期間を示すよう命じた。
2021年2月28日/フロリダ州オーランド、保守政治活動協議会(CPAC)で演説するドナルド・トランプ前大統領(ゲッティイメージズ/ジョン・ラウックス/AFP通信)

5月5日、フェイスブック社のドナルド・トランプ前大統領のアカウント停止を審査していた独立監視委員会は同社の停止措置を支持したが、「無期限の停止」は不合理であるとして、フェイスブックに具体的な停止期間を示すよう命じた。

監視委員会の決定を覆すことはできず、フェイスブックは6カ月以内に結論を出すよう命じられた。これによりトランプ前大統領のフェイスブック復帰は持ち越されることが決まり、ボールを預けられたフェイスブックは難しい決断を迫られることになった。

フェイスブックの決断は同社の運営に大きな影響を与える可能性がある。トランプ前大統領の支持者はアカウントの復元を望んでいたが、今回の決定に激怒した。一方、民主党支持者はフェイスブックが復帰を認めた場合、ソーシャルメディアの規制措置を強化するよう議会に圧力をかける可能性がある。

名誉毀損防止同盟の責任者のひとり、ジョナサン・グリーンブラット氏はこの決定について、「委員会は缶を蹴り飛ばしただけだ」と非難した。「政府はソーシャルメディアプラットフォームに対する監視を強化しなければなりません。決断をフェイスブックに委ねるのは間違いです」

監視委員会は5日の声明の中で、「フェイスブックは委員会の決定を検討し、一般ユーザーを含む全ての人に適用できる規則を示さなければならない」と述べた。「トランプ前大統領のアカウントを永久に停止するという最初の決定は不合理であり、同社は全てのユーザーに適用できる規則を示し、その規則を速やかに適用しなければなりません」

共同議長を務める元デンマーク首相のヘレ・トーニング=シュミット氏は記者団に対し、「簡単に結論を出すことはできない」と述べた。「私たちはフェイスブックに透明性を求めています。ソーシャルメディアは全てのユーザーを同じように扱う必要があります。特定のユーザーに恣意(しい)的なペナルティを与えることは認められません

これに対しフェイスブックは、「委員会の決定を尊重し、答えを示す」と述べた。

監視委員会は、フェイスブックの規則の見直しに関する多くの勧告を行ったうえで、「ソーシャルメディアは委員会の決定に基づき規則を注意深く見直さなければならない」と述べた。また、委員会によると、今回の決定は先月発表する予定だったが、問題に関する9,000件以上の問い合わせや様々な反応が寄せられたため、それらを検討するために決定を1カ月延期したという

2021年1月20日/ワシントンD.C.ドナルド・トランプ前大統領(AP通信)

一方、新しいウェブサイト「From the desk of Donald J.Trump(ドナルド・トランプの机から:通称ドナルドの机」を立ち上げたトランプ前大統領は、監視委員会の決定後に声明を発表した。

トランプ前大統領は、「フェイスブック、ツイッター、そしてグーグルが行った措置は恥ずべきことです」と述べた。「過激な極左狂信者は真実を恐れ、アメリカ合衆国の大統領から言論の自由を奪いました。しかし、アメリカ国民は腐敗したソーシャルメディア企業を支持せず、それらは政治的代償を支払うことになるでしょう。アメリカの選挙プロセスの破壊を二度と許してはなりません」

ジョー・バイデン大統領は監視委員会の決定に関するコメントを控えたが、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「主要なプラットフォームは信頼できないコンテンツ、偽情報、誤った情報の増幅を止め、すべてのアメリカ人の健康と安全に関する責任を負う義務がある」とバイデン大統領の見解を示した。

監視委員会は、トランプ前大統領の1月6日の投稿のうち2つがフェイスブックとインスタグラムのコンテンツ基準に違反したというフェイスブック社の主張を認めた。

トランプ前大統領は動画の中でワシントンD.C.議会議事堂を襲撃した暴徒たちに、「私たちはあなたを愛しています。あなたはとても特別だ...あなたたちは偉大な愛国者として永遠に記憶されるでしょう...」と述べた。

監視委員会は、「トランプ前大統領は暴力に関与した人々を称賛したり支援したりすることで、フェイスブックの規則に違反した」と認め、停止を正当化した。また、委員のひとりは、危険な個人および組織に対する同社の規則を引用した。「フェイスブックの規則は暴力的な使命を宣言する暴徒および、暴徒を支持または称賛する投稿を禁止します」

しかし、監視委員会はフェイスブックに対し、「アカウントの停止に責任を持たなければならない」と付け加えた。「トランプ前大統領のアカウントを復元する場合、フェイスブックは新たな違反に迅速に対処できなければなりません。そして、大勢の聴衆を持つ人は誰でも深刻なリスクを引き起こす可能性があるため、政治指導者と他の影響力のあるユーザーを区別せず、同じように規則を適用しなければなりません」

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOの元スピーチライターで、現在は監視委員会のスポークスマンを務めるデックス・ハンター・トリッケ氏は次のように述べた。「世界のリーダーまたは非常に影響力のある公人は大きな力と発言力を持っており、あらゆる種類のリスクを生み出す可能性があります...フェイスブックは害を及ぼす可能性のあるアカウントを取り締まる場合、明確な規則に基づき公正に対処しなければなりません」

一方、フェイスブックの批評家のひとり、公民権運動のリーダーのラシャド・ロビンソン氏は監視委員会の決定を非難した。「フェイスブックはトランプを何年も放置し、決定的な行動と呼んだ1月の停止は官僚的なプロセスに過ぎませんでした。フェイスブックはソーシャルメディアの規制措置を食い止めることしか考えていません」

アメリカのソーシャルメディア関連の法律や規則が見直されるかどうかは不明であり、導入には議会とホワイトハウスの介入が必要である。

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