◎訴訟は同州チェンバーズ郡のリサ・コーリー氏によって提起された。コーリー氏は訴状の中で、大寒波の週の電気料金が9,000ドル以上(約95万円)に高騰したと主張している。
2021年2月16日 Getty Images/テキサス州フォートワース

先週の大寒波で大停電に見舞われたテキサス州の市民は、目を見張るような電気料金請求書に困惑し、同州の民間電力卸売業者グリッディ・エナジーに対し、10億ドル(約1,070億円)の集団訴訟を起こした。

この訴訟は同州チェンバーズ郡のリサ・コーリー氏によって提起された。コーリー氏は訴状の中で、大寒波の週の電気料金が9,000ドル以上(約95万円)に高騰したと主張している。訴状のよると、コーリー氏宅の平均月額請求額は200ドル~250ドルほどだという。

リサ・コーリー氏(訴状):
「グリッディ(電力卸売業者)は2月13日から18日の間の料金1,200ドル(約13万円)を銀行口座から引き落としました。2月1日から19日の間の請求額は9,540ドル(約100万円)でした

訴状によると、別の顧客の請求書には17,000ドル(約180万円)と書かれていたという。コーリー氏らはグリッディ・エナジーが約29,000人の顧客から電力を奪ったにも関わらず、困難に直面する顧客の息の根を止めに来たと非難した。

コーリー氏は大寒波の最中に80代の両親を自宅に迎え入れたという。しかし、2月17日から18日まで電力は一切供給されず、危うく凍死しかけたと主張し、「グリッディ・エナジーは市民を凍死させたにも関わらず、法外な電気料金を請求しました」と憤った。

テキサス州の市民は2つの電気料金オプションを選択できる。1つは電気の市場価格の状況に関係なく単価が固定されているプラン、もう1つは使用電力量と市場価格に基づいて単価が変動するプラン。グリッディ・エナジーは後者を提供している。

グリッディ・エナジーはホームページの中で、「私たちは顧客に電力の卸売りのリアルタイム価格を請求します。これは5分ごとに変動します。顧客は他の小売エネルギープロバイダーや電力会社と実質的に同じ価格を支払うことになります」と述べ、このプランを選択すればほとんどの顧客の電気料金は安くなると自慢している。

先週の大寒波はテキサス州の電力網を打ち負かし、記録的な寒さの中で数百万人がブラックアウトに直面し、被害を免れた地域も計画停電に協力した。また、供給不足と電力需要の増加により、グリッディ・エナジーの卸売料金は1MWhあたり9,000ドルに急上昇した。なお、訴状によると、大寒波の前の料金は1MWhあたり50ドルだったという。

2021年2月16日 Getty Images/テキサス州ヒューストン、アメリカとテキサス州の旗

今回提起された訴訟は、「コーリー氏と同じ立場にある全ての人々」に合計10億ドルの金銭的救済を求めている。また、グリッディ・エナジーはテキサス州の取引慣行に違反していると非難し、同社の高額請求を速やかに停止する差し止め命令も要求している。

ヒューストンのポッツ法律事務所のデレク・ポッツ弁護士はABCニュースの取材に対し、「グリッディ・エナジーは29,000人以上の顧客を抱えており、訴訟は会社の経営に大きな影響を与える可能性がある」と指摘した。

デレク・ポッツ弁護士:
「グリッディ・エナジーは、法外な電気料金を大惨事の真っただ中にある顧客の銀行口座から躊躇なく引き落とした理由を説明しなければなりません。この行為は、消費者を保護するために施行されているテキサス州の州法に明らかに違反しています」

一方、グリッディ・エナジーはホームページの中で、危機の真っただ中に電力の卸売市場価格を引き上げたテキサス公益事業委員会を非難し、「同社は電気料金の値上げから利益を得ていない」と述べた。

グリッディ・エナジー:
「私たちはテキサス公益事業委員会に説明を要求し、顧客と一緒に戦うと約束します。何百万人もの市民が電力を失った時に、なぜそのような値上げが許されたのかを明らかにしなければなりません」

テキサス州の電力の90%を取りまとめるテキサス電気信頼性評議会(ERCOT)も、400万人以上の顧客から電力を奪ったことで非難され、訴訟に直面している。

2月23日、ERCOTの会長と副会長を含む4人の取締役が辞任を表明した。なお、辞任した取締役たちはテキサス州外に住んでおり、停電の影響は受けなかったと伝えられている。

ERCOTを監督するテキサス州公益事業委員会は声明で、「新たな取締役候補者たちは、氏名を公表しないよう私たちに要求している」と述べた。

大寒波の影響で死亡した人は70人以上、数百万人が今も深刻な水危機に直面し、連邦政府と支援団体のサポートを受けている。

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