帰還ミッション開始

アメリカの宇宙飛行士、「ダグラス・ハーレー氏」と「ロバート・ベンケン氏」を乗せたクルードラゴン・エンデバー号と国際宇宙ステーション(ISS)のドッキングが解除され、地球への帰還ミッションを開始した。

二人を乗せたスペースシャトルは、現地時間8月2日14:40、フロリダ州の東海岸沖に着水する予定である。

このミッションが成功すると、アメリカは「民間企業の力で人間を軌道に乗せ、国際宇宙ステーションなどで仕事をこなし、地球に帰還した」という地球史上初の実績を残すことになる。

アメリカ航空宇宙局(NASA)とタッグを組んだスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)は、クルードラゴンの着地地点をフロリダ東海岸沖に設定。現在、同地域を移動中のハリケーン・アイザスとは、十分距離を保てるという。

二人を回収する船は、フロリダ州西部のペンサコーラとパナマシティの接する海域で待機、出動指示を待っている。

指令本部は、許容できる風と波の状態に関する厳格なガイドラインを遵守し、「再突入可能許可」をクルードラゴンに与えるべく、最新の気象情報、気象予測収集を行っている。

地球への突入許可が下りた時、ハーレー氏とベンケン氏を乗せたカプセルはスラスターを点火し、軌道を離脱。地球への降下を開始する。

カプセルは地球の重力に引き寄せられ、毎秒数キロメートルで高速降下する。その後、大気圏に突入すると、クルードラゴンのボディは2,000℃で加熱される。なお、この時、超高温のガス(プラズマ)が機体を一時的に覆いつくすため、数分間通信が途絶える

カプセルには、2組のパラシュートシステムがプログラムされている。一つ目のパラシュートが起動し、地上約5,500mを560Km/hで通過。その後、地上1,800mで4つのメインパラシュートが起動し、クルードラゴンはゆっくり海面に着水する。

今から45年前、アポロ計画のラストミッション、「アポロ・ソユーズテスト計画(1975年)」でアメリカの宇宙飛行士が軌道から地球に無事帰還した。

スペースシャトルに2度搭乗し、クルードラゴンミッションを指揮するダグラス・ハーリー氏は、当時の報告を読み、海の上で回収を待っている宇宙飛行士が吐き気に襲われるかもしれないと述べた。

ハーリー氏は7月31日に行った記者会見の中で、「宇宙飛行士はありとあらゆる可能性を考慮し、必要な荷物を揃えている。彼らが酔うか否かは分からないが、その時に備えてタオルは必ず手元に置いているだろう」と語った。

宇宙服製作ラボの舞台裏

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星条旗

5月末、クルードラゴンは国際宇宙ステーションへのフライトを開始した。これは民間企業が主体となって行い、初めて軌道に到達した歴史的ミッションとなり、宇宙新時代の到来を告げた。

NASAは、乗務員輸送用ハ―ドウェアの所有および運用はしないことを決めており、民間企業などのパートナーから購入することを望んでいる。

カリフォルニア州に本社を置くスペースXは、NASAの最初のパートナーである。同社が開発したファルコン9ロケットの部品を含む大量のハードウェアの多くが再利用可能であり、NASAのコスト削減に大きく貢献した。

NASAを管理するジム・ブリデンスティン氏はBBCの取材に対し、「まず、安全性に関する高レベルの基準を満たす必要がある。民間企業の場合、次にコストだ。我々は安全性などの必要要件を除き、設計には関与しなかった。結果、民間企業は自社の力でスペースシャトルと開発することになった」

「彼らは安全性を担保しながらコスト削減努力を続ける。再利用できるロケットやカプセルを設計できれば、コストを抑えることができるだろう。このシステムを使い、次は月、最終的には火星でのミッションを目指す」と述べた。

なお、同じくNASAとタッグを組むボーイング社は、国際宇宙ステーションへの「タクシーサービス」を開発したが、商用有人宇宙船CST-100スターライナーのソフトウェアに問題が生じたため、導入計画の遅延が決まっている。

地球への帰還ミッションは、二人の宇宙飛行士がアメリカの土を踏んだ時に完結する。

ミッションが成功した場合、NASAは恐らく9月の終わり頃までに定期的な「宇宙への旅計画」の開始をスペースXと取り決めるだろう。

着水したクルードラゴン・エンデバー号は、再びファルコン9で宇宙に飛び立つべく、修理工場でメンテナンスを受ける予定である。

ロバート・ベンケン氏の妻、宇宙飛行士の「メーガン・マッカーサー氏」も、次回のフライトで宇宙を目指すことになる。

ベンケン氏は、スペースシャトル内に個人的な荷物を持ち込みたいのであれば、準備を整え、パズルのように無駄なく整理することが重要だと述べた。

しかし、荷物の整理を怠ると大変なことになるだろうと妻にアドバイスし、「大きなパンを宇宙で食べたければ、取り出しやすい位置に入れることが大切だ。バッグの中がゴチャゴチャだと船内に荷物が散乱し、とても恥ずかしい思いをするだろう」と警告した。

ハーレー氏とベンケン氏は、国際宇宙ステーションで保管されていた記念の星条旗を地球に持ち帰る。そして10年後、この星条旗は月に設置される予定だという。

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