◎ロシアは長年、西側(主に米国)の化学兵器に関する偽情報を繰り返し流布してきた。
2022年3月9日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、ジェン・サキ報道官(Patrick Semansky/AP通信)

3月9日、米ホワイトハウスはロシアがウクライナに対して生物・化学兵器を使用する可能性があると警告した。

ロシア外務省のザハロワ報道官は今週、「ウクライナは米国の支援を受けて違法に化学兵器を開発している」と主張したが、米国はこの主張を却下し、ウクライナは「プロパガンダ」と呼び非難している。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は9日、ロシアの主張をあらためて否定し、「ロシアの主張はウクライナに対して大量破壊兵器を使用する下準備の一部である可能性がある」と指摘した。

またサキ報道官は会見後、ツイッターに、「ロシアは誤った主張をし、中国はそのプロパガンダを支持しているように見える今、国際社会はロシアがウクライナで化学兵器や生物兵器を使う可能性や、ウクライナがそれらを使ったという”偽旗作戦”に警戒する必要がある」と投稿した。

米国は数カ月前からウクライナ侵攻の口実を作ろうとするロシアの偽旗作戦に警戒するよう西側諸国に呼びかけてきた。

化学兵器の使用もあり得るという9日の警告は、ロシアがウクライナに対する攻撃をエスカレートさせる口実を作ろうとしている可能性を指摘したものである。

ロシア軍は3方向から首都キエフに攻め込もうとしていると伝えられているが、ウクライナ軍の激しい抵抗に直面し、思うように前進できていないと考えられている。

一方、ロシアの国連大使は9日の声明でウクライナへの非難を繰り返し、「西側のメディアはウクライナの秘密の生物化学実験を報じる必要がある」と促した。

しかし、国防総省のカービー報道官は9日の会見でロシアの主張を「たわ言」と呼び、却下した。

国際社会は昨年投獄されたロシアの野党党首アレクセイ・ナワルニー氏や元スパイのセルゲイ・スクリパリ氏(イギリスに亡命)といったプーチン大統領に敵対する勢力が化学兵器で暗殺されかけたという疑惑を長年評価してきた。

ナワルニー氏とスクリパリ氏に使用された旧ソ連の神経毒「ノヴィチョク」はVXガスの5~8倍、ソマンの10倍以上の致死性があると考えられている。

またロシアは、シリア内戦で国民に化学兵器を使用してきたアサド政権を支援しており、一部の専門家はシリアで使用された化学兵器はロシア産と指摘している。

国連のドゥジャリク報道官は9日、ロシアのジャーナリストからウクライナは化学兵器の開発を進めている可能性があると問われ、「現時点で違反行為は確認できていない」と答えた。「ウクライナ政府と協力してきた世界保健機関(WHO)は、化学兵器や生物兵器の使用を含む国際条約に違反するウクライナ政府のいかなる活動も確認できておらず、それを示唆する証拠も見つかっていません...」

ロシアは長年、西側(主に米国)の化学兵器に関する偽情報を繰り返し流布してきた。

1980年代には米国が実験室でHIVを作ったという陰謀説を流した。最近ではロシアの国営メディアが、ウクライナやジョージアの実験室で危険な研究が進められていると報じている。

米国やウクライナに関する陰謀論は中国の国営メディアも取り上げており、米国からコロナウイルスが広がったというオンライン掲示板も人気を集めている。

キングス・カレッジ・ロンドンの科学・国際安全保障の専門家であるレンゾス教授はAP通信のインタビューの中で、「ウクライナに生物・化学兵器を開発する研究所は存在しない」と断言し、「米国の脅威削減プログラムを通じて資金を得た施設ならある」と述べた。「ウクライナの公共動物保健センターは米国の支援を受けています」

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